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第1話『夢の世界へようこそ!…数分後地獄を見る』
リーフは思わず、目を擦った。
今、目の前に夢のような世界が広がっているのだ。
もう一度、擦る。
(「これは夢なのか!?」)
今度は目を擦らず、頬をつねる。
「……痛……っ!」
そして、確信する。
「やっぱり夢じゃない……! 夢じゃないんだぁ!」
そのリーフの言葉に、花園の中央にいたその、愛らしい少女が振り返る。
「んぅ? りーふ?」
その愛らしさにリーフは、ふにゃらーっと笑みを浮かべたのであった。
「わっはー☆ 花園と言えば……恋人同士がウフフ♪ アハハ♪ だよねっ!」
満足げに頷きながら、花園を見渡し呟いた。
けれど、すぐに思い立つ。
(「小さなクゥちゃんと追いかけっこは難しそうだ……傍目から見れば犯罪者にしか見えないな」)
今日のお相手であるクゥは、外見年齢6歳だ。そして、自分はその倍以上の17歳。
誤解されそうな年齢差……なのかもしれない。
ならばと、リーフは知恵を絞った。リーフもクゥも楽しめる。
それすなわち。
「わぅぅっ? ……きゃははぅっ♪ たのしーねぅぅ☆」
そう、クゥをお姫様だっこして、走り回るのだ。嬉しそうにぎゅっと抱きついてくるクゥが可愛くてたまらない。
「二人でこのまま、愛の逃避行だぁー☆」
と、服を引っ張り、クゥが尋ねる。
「りーふ、りーふ。とーひこーってなぁ〜に?」
「一緒にこうやって逃げるって事だよ」
微笑んでそう答える。クゥにとっては、まだよくわからないが、楽しいことには変わりない。
「ふふふ、今日はお家に帰さないぞ☆」
そういって、ウインクするリーフ。リーフは花畑をスキップして回る……いや、逃避行に夢中だ。
「ぉぅちにはかえるよぅー? くーは、ままといっしょにねるのぅ!」
なんだか妙に話がかみ合っていないが、二人が楽しいのならばそれでいいのだろう。
クゥもリーフに抱きかかえられて、楽しそうに喜んでいる。
「りーふ、ちょうちょっ! ちょうちょなのぅ!」
綺麗な蝶々を見つけて、手を伸ばそうとするクゥ。
「わっ! クゥちゃん! 急に動いちゃ……」
バランスを崩して、クゥはぼてっと、リーフの手から落っこちてしまった。
「………ぅええ……ええええええんぅ!!」
「クゥちゃん、ごめんっ! 大丈夫!?」
どうやら、見た目、怪我はない様子。けれど……クゥが泣き止まない。
「クゥちゃんクゥちゃん、ほーら、へんな顔ーっ!」
「ぅえええええっ!!!」
泣いているクゥ。その泣き声にリーフ達の周りに人が集まってきた。
「え、えっとこれはその、うっかり間違って……その……」
視線が痛い。周りに集まる人々が、きっとこれは誘拐だと話が聞こえる。
「いやその! 誘拐じゃなくってっ!!」
有無を言わさぬその視線は。
「ち、違うんだってばぁーーーーっ!!」
数時間後、泣きつかれたクゥに美味しいお菓子が与えられ。
リーフはどこかへと連れて行かれたのは言うまでもない。
「ご、誤解だってばーーー!!」
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