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合縁奇縁
星が煌めき、月が照らす夜。
ラシェットの持つ、淡いランプの光がゆらゆらと揺れていく。
光が止まった場所は、淡い色を持った花が咲き乱れる一本の木。
残念ながら、これは女神の木ではない。
けれど……その木の下には、先客がいた。
「良い夜ね」
「…………」
ラシェットが声をかけた女性、それがレイであった。
レイは隣にラシェットが座っても、何もいわずにそれを見守っていた。
嫌な顔は見せていない。
嬉しそうな素振りも見せていない。
ただ、何もいわず、ちらりと視線を送っただけ。
その視線もいつの間にか、花へと向けられていた。
ラシェットは、レイの隣にいても良い事を感じ、ふわりと笑みを浮かべる。
「良い夜ね。私には、一番似つかわしくない日だけど」
そう隣に語りかけながら、ラシェットもまた、レイと同じく花を見上げた。
辺りを見渡せば、そこにはラシェットとレイ以外にも数多くの人々が集まっていた。
彼らは愛を語りに来ている。
そう、今日はランララ聖花祭なのだ。
星屑の丘の上は、少し賑やかになってるといっても過言ではないだろう。
どちらかというと、レイもラシェットも、このような場所は好んで来る方ではない。
けれども、なぜか、ここに来ていた。
それは、今日がランララ聖花祭という、特別な日だったからだろうか?
それとも、この美しい花が二人を呼んだのだろうか?
偶然来たはずなのに。
いるはずのない相手がそこにいた。
それだけで、少し嬉しくなってしまうのは、気のせいだろうかと、ラシェットは思う。
ふわりと木が揺れた。
揺れると同時に、花びらも舞う。
「綺麗……」
呟くようにラシェットは、その花びらを一枚、手のひらに乗せた。
「………」
何もいわなかったが、レイも綺麗な花を見上げている。
そんなレイの頭にも、ふわりと花びらが落ちてきて。
思わずラシェットは笑みを浮かべた。
「こういう夜も嫌いじゃないわ」
そんなラシェットの言葉に、レイも僅かに瞳を細めて。
「…………たまに、なら」
小さな声で単調な声色のようだったけれども、レイもそう答えた。
ラシェットには、それで充分だった。
満足したかのようにくすくすと微笑むと。
「本当、今日は良い夜ね」
最後に繰り返すかのように、ラシェットはそう呟いた。
空には月が輝いていた。
美しい花も風が吹いては、その花びらを落とす。
そんな儚さが二人には心地よく感じられた。
いつかは、ラシェットの持ってきたランプが揺れ、丘を降りてゆくだろう。
それまでは、この二人の時間を楽しもう。
美しい花の見える、この場所で。
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