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幸せの味
さえずりの泉に来ていた、マルエラとカイエン。
二人はその泉の畔に座り、泉を眺めていた。
厚着はあまり好きではない、マルエラ。
この日も寒いと分かっていても、やっぱり薄着で来ていた。
「くしゅん」
堪えきれずに出てしまうくしゃみ。
それを見ていたカイエンは、名案を思いついた。
「暖めてやろうか?」
「え?」
そういって、カイエンは後ろからぎゅっと、マルエラを抱きしめたのだ。
すっぽりとカイエンのロングコートに包まれてしまうマルエラ。
「……ねー、いつまでこうしてるの? チョコ、食べれないよ?」
そういって、マルエラは持ってきたお菓子を取り出す。
「折角、美味しい生チョコ作ってきたのに」
むーっとしながら、マルエラは抗議する。
そんなマルエラにカイエンは言う。
「心配ねェよ。……お前が食わせてくれるんだろ?」
悪戯な笑みを浮かべて。
その言葉にマルエラはぽっと、赤く頬を染めた。
「いっ……いいけど」
生チョコレートを一つ摘んで。
「ほら、あーん」
マルエラが差し出したチョコをぱくっと食べた。
「……ん、美味い」
「も、もうっ! だから、恥ずかしいんだってば!」
恥ずかしがるマルエラに、カイエンは笑う。
「そういうお前も可愛いな」
「な、何言ってるのよ、もうっ」
もちろん、マルエラも恥ずかしいだけで、この行為自体は嫌いではない。
去年は恋人同士だったランララ聖花祭。
今年は夫婦になってからのランララ聖花祭。
去年も幸せだったが、今年もあの時以上に、もっとずっと幸せ……。
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