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甘いのはチョコレート?奥さんの香?
暖かい陽の光を浴びて、さえずりの泉はきらきらと輝いていた。
綺麗な場所。
その光景を眺めながら、リンは呟く。
「二人で初めてここにやってきたけど、案外綺麗な所なんだな」
「ええ」
その声にオヴェリアは幸せそうに瞳を細めた。
程よい場所を見つけて、二人は腰を下ろし、さえずりの泉を眺めていた。
泉は変わらず、きらきらと輝いている。
「オーリ、膝枕してよ」
突然のリンの申し出に、オヴェリアは驚きながらも頷く。
「いいですよ……」
ぽんぽんと自分の太ももを軽く叩いて、招いた。リンは嬉しそうにそのやわらかく、温かな膝枕に頭を預ける。
「オーリの膝枕、気持ちいいな」
「もう、リンったら」
リンの言葉に照れながらも、オヴェリアもまんざらでもない様子。
こうしてゆっくり、二人一緒にいられる時間があるということ。それだけで、嬉しくなってしまう。
リンの頭を優しくなでるオヴェリアの顔には、自然に幸せそうな笑みが浮かんでいた。
「リン……私、とっても幸せです」
今、オヴェリアの胸は幸せな想いでいっぱいになっている。
「ねぇねぇ、オーリさん。オーリさんの作ったチョコレート食べさせてよ。あーんでさ」
見上げるように懇願するリン。
実はコレ、リンが一度やってみたかったことだったりする。
オヴェリアは恥ずかしそうに頬を染めながらも、この日のために用意してきた手作りチョコレートを取り出した。
「ふふ……あ〜ん、して下さい」
「あーん……」
嬉しそうに口をあけるリン。
甘いチョコレートが口の中に広がる。幸せな味を堪能しながら、ふと思い出した。
(「結構やっている気がするのは……きにしなーい」)
前にもやったような、なかったような。
けれどもリンは気にしないことにしたようだ。嬉しそうに、あーんと口を開いて、またチョコレート入れてもらえるのを待っている。
(「こういうのは楽しめればいんだよな、楽しめれば」)
また甘いチョコレートが口の中でとろけた。
「リン、愛してますよ」
愛する旦那様と一緒にいられる。それだけでオヴェリアは嬉しい。
甘い言葉と共にオヴェリアは、また、リンの口の中に、優しくチョコレートを入れてやるのであった。
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