● 星降る丘で愛を誓う

 ここは星屑の丘。
 夜の空に瞬くのは、綺麗な星々。
 静かな丘で、ローランとジョゼフィーナは、美しい夜空を見上げていた。
「ジョゼ」
 ローランは丘に立つジョゼフィーナの後ろから、包み込むように彼女の肩を抱いた。
 肌寒い風が、ローランのマントによって遮られる。
 ジョゼフィーナはくすぐったいような、嬉しいような笑顔で振り返った。
「前にも言ったな。ジョゼの命が尽きるまで、俺の人生はジョゼのものだって……」
 既にローランの口から聞いた、約束の言葉。
 思い出し、そして、恥ずかしそうにジョゼフィーナは頬を染める。
「……はい……仰ってましたよね……」
 その答えにローランは真面目な顔で、空を仰ぐように。
「騎士は護ると誓った姫君との約束は破らない……。ましてや、その姫君が今は俺の妻なんだから尚更だ……」
 騎士と姫。
 守る者と守られる者。
 御伽噺のワンシーンのような、そんな錯覚さえ覚える。
 そのローランの言う姫君は、ジョゼフィーナに他ならない。
 大切な人の甘い言葉は、人をも狂わせる美酒のようにも聞こえる。
 実際、ジョゼフィーナはローランの言葉にどきまぎして、くらくらしていた。
 嬉しくて、恥ずかしくて。そして、幸せで……。
「……あ、ええ…その、恐れ入ります……。そうおっしゃっていただいてうれしいです……」
 その様子にローランは、安心させるように優しげな笑みを見せた。
「だから心配するな。いずれ死が二人を別つまで、俺はジョゼを護り、愛していく……」
 騎士の誓いのように。
 ローランは目の前にいる愛する妻にそう告げる。
「……はい」
 ジョゼフィーナはこくんと頷いた。
 そして、愛しい夫にその身を委ねる。
 ローランはしっかりと彼女の肩を抱き寄せた。

 静かな夜に響いた誓い。
 重なる口付けは、永遠の愛の証。
 煌く星空の下で、深まる愛を確かめ合った。

イラスト:摩宮靄羅