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一番温かいもの
目の前には、ちょこんとシャルが座っている。
目が合うと、シャルはにこっと微笑んだ。
「はい、ザックさん」
僅かに頬を染め、シャルは持って来たお菓子を差し出した。
既に女神の木に奉納をし終えている。
「ありがとう、シャル」
ブリザックも嬉しそうに瞳を細めた。
受け取ったお菓子を開き、中を見た。
中には、星やハートをあしらった金貨型のチョコレートがたくさん入っていた。
ブリザックはさっそく一つ貰い、口に運ぶ。
「ん、美味しいよ」
「よかったです……その、ザックさんの口に合うか心配だったものですから」
ブリザックの手からチョコレートが手渡される。
「一人で食べるよりも、二人で食べた方が美味しいだろうし」
少し照れている様子。
「ありがとうございます」
嬉しそうにまた、にこっと微笑むと、シャルもチョコレートを食べ始めた。
二人の口の中には、甘いチョコレートの味が広がっていく。
気がつけば、空には星が瞬き始めていた。
遠くで月も見える。
ブリザックは草原に寝転がりながら、空を見上げていた。
「楽しいから、気づかなかったな」
つい、会話とお菓子に夢中になっていたようだ。
少し肌寒く感じるのも頷ける。
「シャル」
「はい?」
隣で共に寝転がっていたシャルが、呼ばれて振り返る。
そして、ブリザックは、そんなシャルをそっと抱き寄せた。
「ざ、ザック……さん……」
「こうすれば、暖かいだろ?」
「……はい、とっても」
頬を染めてシャルは、頷く。
人肌も、羽毛も温かくて。
二人の時間はまだ、終わらない。
甘くて暖かくて幸せな、二人だけの時間は、まだ……。
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