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初めての手作りケーキ
2月14日は、ランララ聖花祭の日。
そしてその日は、愛する旦那様の……レナートの誕生日でもあった。
ランララの日に誕生日を迎えるレナートの為に、その妻、セイカは早起きして、ケーキを作る。
「料理は苦手だけど、愛する人のためならっ!」
一部、ちょっとだけ……いや、かなり心配になる発言があったが、この際気にしないで置こう。
セイカはせっせと、ケーキを作っていく。
「おいしい物を混ぜれば、どうにかなりますよねっ」
セイカはどさどさと材料を入れて、ぐるぐるかき回し、ケーキを焼いていく。
「で、出来ました……」
セイカはさっそく、出来立てのケーキを手に、約束の場所へと向かう。
一つ、大事なものを家に忘れて……。
「手紙だなんて、なんだか嬉しいな……」
レナートはセイカから貰った手紙を手に、約束の木に向かっていた。
手紙には、楽しみに待っててねと書いてあった。
それに、今日は彼の誕生日。期待に胸が膨らむのも無理はない。
子猫のサユが入ったバスケットを片手に、レナートは目的地についた。
「セイカさん! お待たせしちゃったかな?」
「私も来た所です。時間、ぴったりですね」
そのセイカの言葉にレナートも笑みを浮かべる。
すぐさま、木の下に座り、セイカは持って来たバスケットをレナートに手渡した。
「お誕生日おめでとうございます、旦那様♪」
「わあ……ありがとう! 何かな?」
ぱかっとバスケットをあけると……そこには見るからに、美味しそうなケーキがあった。
「これは……」
「私が作ったんですよ」
にっこり微笑んでいう、そのセイカの言葉は、レナートにとって、ものすごく危険なものを感じた。
ちなみに、セイカの料理の腕は、食べて絶望的な気持ちになるほど、下手だったりする。
ごくりと、レナートはセイカの気づかれないところで、息を飲んだ。
今回のケーキは……奇跡と呼ぶほどに美しい出来だ。外見は。
だが油断してはならない。そう、大事なのは味なのだ!
セイカに悟られないよう、恐る恐るそのケーキを口に入れる。
「うん、美味しい……」
すっごく驚きながらも、レナートはそう呟いていた。
「がんばった甲斐がありました」
それを聞いてセイカも嬉しそうに微笑んだ。
(「いつの間にこんなに上手になったのだろうか」)
レナートの胸がじーんと熱くなる。
そして、そんな妻を自分の愛で労おうと、妻の肩に手を伸ばそうとした、その瞬間!
「シエルの入ったバスケットがない!」
どうやら、急いで来たらしく、連れてくるはずの猫のシエルを家に忘れてきたらしい。
レナートの手をするりと避けて。
「すぐにシエル連れてくるから、待ってて〜!」
ばびゅーんと家に戻っていくセイカ。
「ああ、そうだね。シエルさん、連れておいで……」
抱きしめるはずだった手を誤魔化すかのように、レナートはぱたぱたと手を振った。
結局、レナートはその日。抱きついてラブラブまではいけなかった様子。
けれども、二匹の子猫がじゃれている側で、二人仲良く美味しいケーキを楽しんだのであった。
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