● Have a good time with you

 心地よいせせらぎ。
 鳥たちの歌声。
 ここは、恋人達が集うさえずりの泉。
 シリュウとソウジュも、この場所に来ていた。
 木漏れ日が暖かく、二人の下に降りていく。

「ん、このチョコ……リキュールが入ってるのか?」
 本当は内緒にするつもりだったのだが、どうやら、シリュウは気づいてくれたようだ。
「ええ、素敵なリキュールを見つけたんですの」
 ソウジュは嬉しそうに、そう微笑む。
「リキュール? 何ていうリキュールなんだ?」
 ぱくりとまた、新たなチョコを口に含んで、シリュウが尋ねる。
「イェーガーリキュールですわ」
 シリュウと同じ名を持つリキュール。それをソウジュが見つけ、お菓子に入れたのだ。
 ずっと側に居たいという、ささやかな願いを込めて。
 それを聞いてシリュウは、思わず、食べていたチョコを喉に詰まらせた。

 甘い時間は、あっという間に過ぎていき。
 シリュウは、ソウジュの膝枕で横になっている。
 気持ちの良い木漏れ日と、ソウジュから貰ったお菓子で満たされたお腹。
 その二つが相まって、シリュウはうとうと、船を漕ぎ始める。
 ソウジュは静かに歌い始めた。
 眠そうな貴方の為に、優しい子守唄を響かせて。
「こんな風に過ごせるのは何時以来かな」
 シリュウはそう呟き、ゆっくりと夢の中へと身を委ねた。

 歌い終えた頃。
 シリュウはすっかり熟睡していた。
 柔らかな彼の髪をそっと撫でる。
「ただ二人でこうしていられる……それだけでいいの。他は何も望まない。今が幸せだから……」
 二人でのんびり過ごせる事に感謝しながら、囁くようにそう呟いた。
 きっと、寝ている彼の耳には届いていないだろうけど。
 ソウジュは微笑んで、ゆっくりと彼の寝顔を眺めているのであった。

イラスト:酔生夢子