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ティータイムを君と
二人が交わした、たった一つの約束。
今、その約束が果たされる。
とはいっても、約束というものではなく、単なる賭けなのだが。
綺麗な花が咲き乱れる花園に、エプロンドレスを着たサイファがやってきた。
誤解ないように伝えておくが、サイファはれっきとした男である。
その恥ずかしそうにやってくるサイファを見て、リゼッテはとても上機嫌で微笑んだ。
「とっても可愛いのですよ、サイファ♪」
「笑うな……っ!」
サイファは真っ赤な顔をさせて、叫ぶのであった。
しばらくして。
「んっ」
サイファはおもむろに持ってきたものをリゼッテに手渡した。
開いたそこにあったのは、フワリンの形をしたチョコレート。
ぱあっと、リゼッテの顔が幸せそうな笑みを浮かべる。
「わ……サイファ、ありがとー……♪」
「………」
恥ずかしそうに頬を染めながら、サイファは俯いてしまった。
暖かいお茶がカップに注がれる。
サイファはそれを受け取り、こくこくと飲んでいく。
そして、チョコレートをぱくりと口にした。
その隣で、リゼッテもお茶を飲みながら、チョコレートを楽しんでいる。
(「こんなふうに、穏やかで楽しい時がいつまでも続くといいな」)
大好きなフワリンの形の、大好きなチョコレートを食べて、リゼッテは幸せそうな笑みを浮かべた。
ふと、サイファはおもむろに顔を上げる。
「……ありがとう、な」
聞こえないくらいの小さな声で、ぽつりと言った。
リゼッテに届かないと思っていた言葉。
なのに、その言葉はしっかりと届いていた。
「おや、女装できた事がそんなに嬉しかったのかな?」
「ち、違うっ! そうじゃなくって!」
リゼッテの言葉にサイファはすぐさま否定している。
「……こちらこそ、ありがとう」
くすくすと笑うリゼッテの、小さな呟きは果たして、サイファに届いただろうか?
「……次はリゼッテがやるんだぜ?」
「はいはい」
サイファの言葉にリゼッテは、そんなの逃げてやろうと思っている。
果たしてサイファの願いは叶えられるのか。
それはまた、別の話……。
今はこの甘くて幸せな時間を楽しもう。
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