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その手に、重ねた手の温もり
女神ランララの木の下で、ソフィアは待っていた。
大切な人が、ここにやってくる。
それだけで、ソフィアの胸は高鳴る。
「まだかな……」
思わず呟く言葉は、笑みを含んで。
ふと、木を見上げた。
木漏れ日から漏れる光を眺めながら。
そういえばと、思う。
記憶を失ったまま、大切な人の家にたどり着いたソフィア。
なのに、暖かく迎えてくれたのは、彼女だった。
あれから、どれだけの日々が過ぎていったのだろう？
「ソフィー」
突然、声が掛けられる。
「チェルシー……あっ！」
嬉しそうに振り返るソフィア。と、そこでソフィアの白いリボンが木に引っかかり、ほどけてしまった。
「ソフィーったら、気をつけなくっちゃ」
チェルシーは、くすくすと微笑みながら、木からリボンを外す。
「ごめん……だって、こういう格好、あまりしないし」
「リボンを付けていることを忘れないで。仮にも可愛い女の子なのだから」
優しいチェルシーの声が響く。
「ん」
チェルシーはソフィアの頭に可愛いリボンを結んだ。大きな白いリボンがふわりと舞う。
あなたがこの世界にいてくれる。
それだけで。
この世界の全てを愛せる。
そっと、ソフィアはチェルシーの手を取った。
チェルシーも微笑んで、その手を握り返す。
なんと素晴らしいことだろう。
あなたがいるだけで、世界の色さえ違って見える。
二人、手を繋ぎ、丘の上から空を見上げ、風の舞う歌を聴く。
そして、そのままゆっくりと移動を始める。
二人の行き先は、既に決まっている。
顔を見合わせ、こくりと頷きあった。
「行きましょ」
「ええ」
幸せそうに微笑む二人は、ゆっくりと丘を後にした。
二人だけが知っている場所で、幸せな時間を過ごすために……。
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