● forever with you

 柔らかな日差しが、高い空から注ぐ。
 二人がさえずりの泉にたどり着いた頃には、もう昼になっていた。
 セラとアイギールは手を繋いだまま、しばらく泉を眺めていた。
 鳥の歌声が響き渡る。
 そして、泉の優しいせせらぎも。
 昼時なせいか、辺りにはあまり人がいないようだ。
 ゆっくりと泉の側を歩いていく。
「そろそろ休憩にいたしましょう」
「ああ、そうだな」
 木漏れ日が心地よい場所で、二人は腰を下ろす。
 さっそく、セラは用意してきたお菓子を取り出した。
 花束をかたどったチョコレート菓子に、アイギールは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「お菓子は沢山ありますから、お好きなだけどうぞ」
「ああ、ありがとう。いだだくな」
 そういって、アイギールはお菓子に手を伸ばす。
「その前に……少しお待ちいただけますか?」
「ん?」
 セラがアイギールの手を止めた。
「あの……ご迷惑でなければ、わたくしが食べさせてさしあげたいのですけど」
 アイギールはその突然の申し出に、きょとんとしていたものの。
「ああ、かまわない」
 優しく頷いた。頬を赤く染めていたセラも嬉しそうに笑みを浮かべた。

 セラはチョコレートを一つ摘み、アイギールの口元へと持っていく。
「はい、あ〜ん」
 差し出されたチョコレートをぱくっと食べるアイギール。
 その様子にまた、セラは頬を染めた。
「やはり……恥ずかしいものだな」
 セラからチョコレートを食べさせてもらう。その様子を想像して、アイギールも頬を赤く染める。
「もう一つ……いかがですか?」
「あ、ああ。貰うよ」
 今度は自分の手でチョコレートを口の中に入れる。
 さきほどと同じチョコレートなのに、セラから貰った方が甘く感じるのは気のせいだろうか?
 照れたように二人は微笑みあい、お菓子を食べていく。

 二人の時間はまだ始まったばかり。
 さえずりの泉で二人は甘いひと時を楽しむのであった。

イラスト:ハルカ零