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ランララ聖花祭〜愛しい人〜
女神の木の下で、ムユウを待つのはエンド。
実は明確な約束などしていない。
けれども、来てくれるとエンドは確信していた。
その手には手作りのお菓子の入ったバスケットが用意されている。
ふと、空を見上げた。
そこには、あの戦いで現れた黒き太陽……いや、正確には魔石のグリモアが見える。
夜だというのに見える、その忌々しい太陽にエンドは思わず眉をひそめた。
一方、ムユウはというと。
「遅くなったなぁ〜ん。まだ……いるかななぁ〜ん?」
疎らになっていく人の数にムユウは次第に不安になっていく。
冷たい風。
そして、夜というこの時間。
ムユウの足が次第に速くなるのも無理はないだろう。
と、前方に人影が見える。
会いたいと願っていたその人。
ムユウは飛び込むようにその人……エンドに抱きついた。
「どう、しました……?」
抱きしめたムユウの手に力がこもる。
「……何でも、ないなぁ〜ん」
本当は不安だったのにそれを出せないのは、きっと相手を不安にさせたくないから。
それを知ってか、エンドは安心させるかのように、ムユウの腕にそっと手を添えて。
「大丈夫です……」
そう静かに答えた。
ムユウはそれを聞いて、その手の力を緩めた。
「うん……大好きなぁ〜ん」
俯いたままだけれど、ぎゅっとまた抱きつくムユウ。
エンドがどこかに行ってしまいそうで。
そんなムユウの耳にエンドの声が届く。
「愛している」
その声にムユウはやっと、笑顔を見せた。
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