●RozeSweet
早朝の花園。人の気配の無いその場所を、コウショウとクリスティナは歩いていた。
まだまだ新婚気分で2人だけの時間を楽しみながら、コウショウはふと、この辺りかなと目星をつけて立ち止まる。
周囲には、朝露に濡れた真っ赤な薔薇。
コウショウが選んだその場所は、美しく咲き誇る薔薇達を眺めるのに最適といえた。
「綺麗だな」
「うん」
コウショウが敷いたマットの上に座る二人。コウショウの膝の上に座ったクリスティナの体は、彼の体と腕の中に、すっぽりと収まる。
小さな小さなクリスティナと、大きな大きな、でも男性としては標準的な大きさでもあるコウショウ。二人の大きな身長差が、気にならないといえば嘘になる。クリスティナは少しだけ苦笑しながら、持参したチョコレートを取り出した。
「ほら……一応、作ってきたのだから。どうぞ」
少し歪な形のチョコレートを指でつまみ、コウショウの口へ運ぼうとするクリスティナ。でも、その手は、ただ伸ばしただけでは届かなくて。コウショウは屈み込んでそれを唇で受け取る。
「美味しいよ」
舌の上で転がして「流石俺の奥さん」とコウショウは笑う。彼にとって、それは最大級の賛辞。その言葉が嬉しくて、クリスティナの顔にも笑みが広がる。
「……ああ、そうだ。クリスティナ」
ふとコウショウは脇に目をやると、一本の薔薇の花を手折った。怪訝そうに首をかしげているクリスティナの顔の前へそれを運び、
「こういう朝霧の薔薇って……」
そっと、クリスティナの口元へと寄せたそれに、クリスティナはまだ何がなにやらといった顔をしながらも、促されるまま口付ける。
「っ。……あ」
薔薇の花弁に唇を塞がれるクリスティナ。最初は驚くクリスティナだったが、でも、すぐに気付く。
唇から伝って流れ込んでくる雫。それが、ふわりと薔薇の香りを漂わせている事に。
「……美味しい」
甘美な雫を味わって、クリスティナは小さく微笑む。
大切な人の腕の中で、あるいは、大切な人を全身で抱きしめて。
朝露に覆われた薔薇の花園の中で、ふたりのランララ聖花祭は、まだ始まったばかり――。
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