●* Bittersweet *
夜の帳が下りた、さえずりの泉。その一角に、寄り添う一組の恋人達の姿があった。
「良く似合ってるよ、それ」
「本当?」
ぎゅっと手を繋いで、互いに見つめ合いながらブレッドとクールは笑い合う。
今日はランララ聖花祭だからと、いつも以上に可愛らしい姿で現れたクールの事が、ブレッドには愛しくて……そして、彼がそう言ってくれる事が、クールには本当に嬉しくて。
二人は幸せに満ち足りた表情で、仲睦まじく肩を寄せ合いながら、湖畔のひとりをゆっくりと散策する。
「鳥……は、この時間だとあまりいないかしら」
耳を澄ませば、聞こえてくるのはフクロウの声。夜だからか飛び交う小鳥の姿も見えなくて。機会があれば招きよせてみたいと思っていた二人は、ほんの少しだけ肩透かし。
でも。
「…………」
二人は見つめ合って微笑みあう。
大切な大切な恋人が一緒だから、それだけで十分。
そんな気持ちに包まれて、胸がくすぐったくなるのを感じながら、二人は歩いていく。
途中、大きな木の根元に腰掛ければ、空には綺麗な月と星。
きらきら輝くのを見上げるブレッドの隣で、クールは予め用意しておいたプリンを取り出した。
「こ、これ……一応、ランララ聖花祭だから」
最後の方は、口の中でごにょごにょと不鮮明だったけれど、ブレッドには確かに「だから作ってみたの」と彼女が囁くのが聞こえて。恥ずかしそうにスプーンでひとすくいするクールの姿に、また笑みを深めて……彼女に食べさせて貰うのは、本当に幸せなことだったから。
「クーも一緒に。……ほら」
「えっ、でも……」
彼女の手からスプーンを取り、反対に一口差し出すブレッド。真っ赤な顔で、やっぱりごにょごにょさせながらも、やがてクールは彼の手からプリンを食べた。
「ありがとう、クー」
「べ、別に……」
照れてそっぽ向こうとするクールの体を、抱きすくめて。
ブレッドはもう1度「ありがとう」と告げる。
だって、彼女が今日、誘ってくれた事が本当に本当に、それだけで嬉しかったのに。
こんな風に過ごす時間は、それよりも何倍もとても素敵で、とてつもなく嬉しいものだったから。
だから、彼女の名前を優しく囁いて、そっとその唇に口付ける。
「ぶ、ブレっ……!」
真っ赤になって抗議するクールだけど、でも、それが照れ隠しだってブレッドはちゃんと知ってる。
優しく笑い続けるブレッドの様子に、やがて負けたかのようにクールは大人しくなって……ちょっとだけ、素直になって。
もう1度、今度はクールの方から口付けた。
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