● 夜空を見上げて

 去年のランララ聖花祭は、色気の欠片もなかったため、今年は少しくらい恋人らしい事をしたいという気持ちで挑んだ、ふたり。
 何となく恋人っぽくしなければいけないと思い、とりあえずくっついてみたり、抱きついたり、愛を囁いたりしてみたが、何をやってもしっくり来ない。
 そうしているうちに日が暮れ、夜空に輝く星が煌き始めたため、いつしかただの天体観測になっていた。
 最初はアリスティアも『あの星が綺麗』と言って一緒に星を見て、楽しい時間を過ごしていたのだが、ここでもっとも重要な事に気づく。
「なんも恋人らしいことしてないな」
 『一応、それなりに頑張ってみたんだが……』と言いたげな表情を浮かべるアリスティア。
「まぁ、いいんじゃねぇか。こんなに綺麗な星が見れたんだから」
 クァイアもあまり気にしていなかったらしく、あぐらをかいてアリスティアの言葉をさらりと流す。
「それも、そうだな。こうやって夜空を見ているだけでも……あっ! おい! いまの見たか? な、流れ星! いま、流れ星が流れたぞ!」
 興奮した様子でクァイアに抱きつき、アリスティアが夜空を指差した。
 だが、既に流れ星は見えなくっており、いくら探しても見当たらない。
「あー? なんだよ、見えないぞ」
 キョロキョロと夜空を見回しながら、クァイアが不思議そうに首を傾げる。
 クァイアとしてはすぐに夜空を見たつもりだが、ほんの少しタイミングが遅かったので、流れ星を見る事が出来なかった。
「なんだよー、冒険者は動体視力が命なんだぜ」
 不機嫌な表情を浮かべ、アリスティアがクァイアを叱る。
 別にクァイアが悪いというわけではないのだが、あの幸福感を分かち合う事が出来ないのは残念だった。
「狂戦士は敵ブチのめしてナンボだぜ! いちいち細かいトコまで見てられっか」
 『そんなモノは必要ねぇ』と言わんばかりの勢いで、クァイアがキッパリと言い放つ。
 その時、彼らの目の前で再び流れ星がキラリと落ちる。
「……今度は見たか」
 アリスティアの言葉に、
「ああ、見た。バッチリとな」
 頷く、クァイア。
 そして、ふたりは流れ星が消えた後、願い事をしていなかった事に気づき、『しまったー!』と大声を上げるのであった。

イラスト:にまい