●星空の下、二人…
夕日が沈み、すっかり暗くなった星屑の丘で、キラとジィルは空を見上げていた。
きらきらと瞬く満天の星空。
それは本当に綺麗で、キラが「うわぁ……」と瞳を輝かせている様子を、ジィルはそっと見つめる。
まだ少しだけ幼さを残す瞳と、緩やかな風に吹かれて揺れる髪。その顔に浮かぶ明るい笑顔。
彼女の全ての何もかもに目を取られ、本気で見惚れてしまう瞬間がある事に、きっと彼女は気付いていないのだろうとジィルは苦笑する。
一緒にいれば何もかもが新鮮で、いつまでもずっと傍にいたくなって。
もう、他の何にも目が行かなくなるくらい。
大切な大切な、俺のキラ。
(「……危なっかしいところもあるけど、でも、俺にだけ、そうなんだよな」)
だからこそ自分自身の手で彼女を護りたいと、そう思うのだろうか。
ずっとずっと、彼女を何もかも全てから守り抜いてあげたいと、そうジィルは強く思う。
「ジィル」
あまりに、そう思案に暮れていたからだろうか。不意に首元に触れた感触に、ジィルは驚いて体を跳ね起こした。
「驚いたです? これ、ジィルにプレゼント」
それはキラが日頃の感謝と、それから愛を込めて用意した一本のマフラー。二人で一緒に使えるように、とってもとっても長いマフラーを用意して、ジィルの首に掛けたのだ。
反対の端は、自分の方へ引っ張って。やっぱり同じようにぐるぐる巻いて。
「ジィル、いつも一緒に居てくれてありがとうです。えーと、その……ぁ、愛してる、ですよ」
あまりにその言葉が恥ずかしくて、キラの目が明後日の方向に泳ぐ。
ジィルの顔が直視できなくて、そっぽ向きそうになるキラ。その顔ごと全部全部彼女を丸ごと、ジィルはただ力いっぱい抱きしめた。
――そんな告白されたら、余裕なんてあるわけねぇだろ?
その言葉を胸の内にしまいこんで必死に飲み込んで、ジィルはキラを強く抱きしめる。その背に、そっと、キラの指先が伸びた。
「え、っと……これからも、よろしくお願いしますね?」
「……ああ」
かなわねぇなと苦笑するジィルに、ただただキラの笑顔が見上げてくる。
いつまでもずっと、互いに笑い合って、その手を繋いで……こんな風に抱きしめあって。
大切な、あなたの隣にいられますように。
そう願いを込める二人の頭上を、一筋の流れ星がきらめいて行った。
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