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知りたいのは…
『俺の恋人になってくれ!』
去年のランララ聖花祭で、ユディトに告白してから、早一年。
スズは『……早いもんだな』と思いながら、この一年を思い返していた。
もちろん、いまだってスズの気持ちは変わっていない。
そうでなければ、さえずりの泉に彼女を誘う事も無かっただろう。
『建前だけの姿でなく、もっと私の内面を知って欲しいの』
あの時、彼女から言われた言葉……。
この一年、その言葉がスズの心に残っていた。
「あの時に言われた言葉の意味を、ずっと考えていたんだ。一体、どういう意味なのかって。……だからさ。もっと知りたいんだ、俺。……ユディトのこと」
お互いのおでこがくっつきそうな距離まで近づき、スズが彼女を見つめてニコッと笑う。
「……教えてくれるかな? 俺は、君の事をどれだけ知っているだろう? 俺の知っている君と、本当の君」
優しく語りかけながら、スズが彼女の顔を見る。
自分の知っている彼女と、本当の彼女を重ね合わせるために……。
「……もう、何言ってるのよ」
照れた表情を浮かべ、ユディトが恥ずかしそうに頬を染める。
彼女からしてみれば、どちらも『自分』である事に変わりない。
どちらか片方が偽者で、どちらか片方が本物というわけではないので、スズの問いに答える事が出来なかった。
「でも、互いの内面を、今よりもっと深く知れば……その時こそは、今までとは違う、新しい関係になれるのかも知れないな。ただ甘いだけじゃない。互いが本当に必要となれるような『深い』関係に……」
……そんな風になりたいと、心から思う。
思っているからこそ、ユディトの事をもっと知りたかった。
「さっきからどうしてそんなに、嬉しそうな顔をしているの?」
ユディトが不思議そうに問いかける。
「……そりゃさ。自分の好きな人のことを、もっと深く知ることが出来るなんて、こんなに嬉しい事は無いからな!」
そう言ってスズが楽しそうに微笑んだ。
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