●
chocolate-sweet lovers-
「ふぅ……、無事に試練を乗り越えれたな。ナジャも無事に試練を越えていればいいけど……」
ホッとした表情を浮かべながら、カインが数多くの試練を乗り越えて、女神の木に辿り着く。
ナジャとは女神の木で落ち合う約束になっているが、未だに試練に挑戦している最中らしく、まわりを見回しても彼女の姿が無い。
（「やっぱり、一緒に試練を乗り越えた方が良かったんじゃないのかな。ナジャからは先に行っててくれって言われたけど……」）
そんな事を考えているうちに、あっという間に時間が過ぎていった。
一方、その頃……。
ナジもようやく試練を乗り越え、カインとの待ち合わせ場所である、女神の木にむかっていた。
（「……昨日、初めてチョコレートを作ってみたけど……、少し焦げちゃったなぁ……。それでも、何とか頑張ってハート型に固めてみたけど、何だか妙にいびつな形になっているし……」）
魂の抜けた表情を浮かべ、ナジャが深い溜息を漏らす。
チョコレートを作ったといっても、ただ単に湯煎で溶かして固めたものだが、なかなか上手く作る事が出来なかった。
それでも、めげずに苦労してチョコレートをラッピングしたが、試練の途中でひしゃげてしまったらしく、だいぶ落ち込んでいるようである。
昔からナジャは家事がからっきしで、料理も苦手だったため、あまり自信が無かったのだが、ここまで不幸が続いていると、チョコレートを渡すべきか迷ってしまう。
それに引き換えカインはとても料理が上手いため、チョコレートを貰っても喜んでくれるのかさえ分からなかった。
（「ナジャも無事に試練を乗り越えたような。……ん？ 何か包みを持っているようだが、あれは……。チョコレートか？」）
不安げな表情を浮かべたナジャを見つけ、カインが彼女の持っている包みに視線を送る。
ナジャは少しひしゃげた箱を持っており、緑色のリボンも歪んでいた。
（「……どうしよう。渡すのが恥ずかしいなぁ。あっ、カインがこっち、見てる。うー……。この状況で帰ったら、カインがびっくりしちゃうよね。が、頑張らなきゃ」）
緊張した様子で汗を流しながら、ナジャがカインと目を合わせる。
「えっと……、味を保障する事は出来ないけど、良かったら受け取って……」
いまにも消え去りそうな声を出し、ナジャがチョコレートの入った包みを渡す。
「ありがとう……、とても嬉しいよ」
彼女からチョコレートの入った包みを受け取り、カインがさっそくリボンを外して食べ始める。
そして、カインはナジャの作ったチョコレートを美味しそうに食べながら、彼女の顔を見つめて優しく微笑みかけた。
|
|
