●初めての手作りチョコ
ランララ聖花祭の夜、ラーズはさえずりの泉で、ティーエが来るのを待っていた。
……緊張で、ガチガチになった状態で。
だって今日は、ティーえと過ごす初めてのランララ聖花祭。彼女に失礼な事をしてしまわないか、そんな心配も手伝って、ラーズは生涯で一番といっても過言ではないくらいに緊張していたのだ。
「あ……ティーエ!」
そんな彼の目に大切な人の姿が映って。ラーズは大きく手を振って彼女の名を呼んだ。
「待たせちゃったかしら?」
「ううん。今来たところですから」
そう答えるラーズを見ながら、ティーエはそっと後ろ手に用意したチョコレートの箱を揺らす。
……彼は、喜んでくれるだろうか?
料理は苦手だから、心配で心配で……でも、自分にしては上手くできた方だと思うから、きっと大丈夫だと思うけど……でも、不安の種は尽きなくて。
頬を赤くして、不安と心配で胸をばくばくさせながら、でも意を決してティーエはチョコレートを詰めた箱を差し出した。
「こ、これ……チョコレート。手作りだから味の保障はできないけど……」
照れ隠しで、ちょっとツンとした態度になってしまうティーエ。でも、ラーズは本当に嬉しそうにそれを受け取った。
大好きで、それから憧れを抱いてしまうくらい素敵な彼女。
そんな彼女からチョコレートを貰えるだなんて、嬉しいに決まっているのだから。
ラーズはすぐさま包みを解くと、それを1つ口に放り込んで「おいしいです」と即答した。
「ティーエ……チョコをありがとうございます」
心の底からの喜びを浮かべるラーズの後ろで、その尻尾がせわしなく動き回る。その動きに、ティーエはようやく安堵を浮かべてくすっと笑った。
「喜んでくれてよかった。美味しいかどうか、ちょっと不安だったから……」
「とっても美味しいですよ! もう1つ食べてもいいですか? ……あっ、その前に座りましょう」
ラーズは慌てて用意しておいた敷物を広げてティーエに勧める。「こういう事には慣れなくて」と頭を掻くラーズだが、ティーエは、その配慮が嬉しくて、ただありがとうと微笑み返す。
「……ラーズ、はい」
それから、ラーズが置いた箱の中から1つチョコを取り出して、彼の方に差し出す。
「あ……」
ティーエのその動作に、ラーズはもう1度嬉しそうに笑って……その口を大きく開けて、とびきり甘くて美味しい、ラーズにとって最高のチョコレートを食べるのだった。
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