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いつか森に還るまで
(「……ちょっと、早く来過ぎたかな」)
キョロキョロと辺りを見回しながら、リヴィールが金木犀の咲き乱れる野に座る。
なるべく遅刻しないようにするため、予定よりも早く来過ぎてしまったためか、どこにもリゼッテの姿が見当たらない。
(「まだ、試練に挑んでいる最中かな……?」)
リゼッテならば必ず試練を乗り越え、女神ランララの木にたどり着くはずだが、それまでにはもう少し時間がかかりそうである。
そのため、リヴィールはお菓子やめんつゆ瓶の詰まった聖獣様のぬいぐるみを抱え、リゼッテがやって来るのを待っていた。
(「……いつか森に還る日まで、一緒にいられたらいいなぁ」)
そんな事を考えながら、リゼッテを待っているうちに、ほんわかと暖かい日差しに誘われ、いつしか眠りの世界へと旅立っていく。
「リヴィ……、ひょっとして、眠っているの?」
それから少し経った後、リゼッテはようやく約束の場所にやってきた。
何度もスタート地点に戻されつつ、何とか試練を乗り越えていったものの、予定の時間よりかなり遅れてしまったようである。
その事を申し訳なく思いつつ、リゼッテはリヴィールに寄り添うような形で、ちょこんと座る。
その途端にペットのオコジョ(ネオ)がリゼッテの肩を駆け下り、スヤスヤと眠りについているリヴィールの頬をペチペチと叩く。
もしかすると、ネオなりに気を使ってリヴィールを起こそうとしたのかも知れないが、リゼッテが苦笑いを浮かべて人差し指をピンと立てる。
それだけでネオは理解する事が出来たらしく、リヴィールにそっと頬擦りした後、リゼッテの肩を駆け上がっていく。
(「命尽きるその時まで、ずっと一緒にいられますように……」)
祈るような表情を浮かべ、リゼッテがリヴィールの頬を撫でる。
リゼッテにとってリヴィールは大切な家族であり、かけがえのない存在。
そんなリヴィールを失いたくないと思いつつ、寄り添うようにして眠りについた。
ネオもふたりに甘えるようにしながら、猫のようにクルッと丸くなって眠りにつく。
そして、ふたりと一匹はほんのりと金木犀の匂いが漂う中、しばしの休息を取るのであった。
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