●
- vicinus stella -
ランララ聖花祭のようなイベントに、一緒に参加して過ごすのは初めてだった。
最初にたどり着いたのは、ジィル。
「キラ、楽しみにしてたからな」
うきうきと今日という日を待つキラの様子を思い出すジィル。
(「幸せな1日にしてやんねぇと」)
心の中でそうつぶやいて、ジィルはゆっくりとキラを待つ。
素直で一途で、いつも真っ直ぐに向かってくる『カノジョ』が、好きで好きで堪らない。
体中にあるという傷も、少し曲がった尻尾の骨すらも、いとおしい。
ジィルは、キラのことを想いながら、気長に彼女が来るのを待つことにした。
「ランララ女神様の日ですー! こうゆう日に一緒に過ごすのは初めてです。ちょっとドキドキしますね」
服装も、髪型も、プレゼントも準備万端!
キラはよしっと、鏡の前で顔をあげた。とびきりの笑顔を浮かべて、プレゼントを手に取る。
「それじゃあ、いってきますっ!」
元気良く扉をあけて、いざ、さえずりの泉へ!
……と思ったのもつかの間。
実は準備に少し時間がかかってしまっていた。
「ジィル、もう着いちゃってるですかね?」
急ぎ足で、泉へと向かうキラ。
いつ、どんな時だって、自分を受け入れてくれる最愛の人。
彼がいてくれるから、どんなことだって怖くなかった。
真っ直ぐ前を見て、歩いていられるのは、笑って抱きしめてくれる彼のおかげ。
だから今日は、日頃の感謝と愛を伝えに……キラは駆けていった。
何となしに、ジィルは顔をあげた。
(「あー。また全力疾走でこっち来る」)
その姿を見つけて、ジィルは笑みを浮かべた。
(「転ばねぇかな? いつも全力体当たりなんだもんなぁ……」)
ジィルは立ち上がり、満面の笑みで両手を広げた。
「キラ!! おいで!!!」
やっとたどり着いた泉。
きょろきょろと見渡して、青いシルエットを見つけた。
思わず微笑んで、走り出す。
全力疾走!
「ジィルーっ、お待たせしました!」
どかーっとキラは、思いっきり両手を広げたジィルの胸に飛び込んだ。
ジィルはキラの体をしっかりと抱きとめる。
好きな人の満面の顔が、間近に見えて。
そして……。
泉の辺で二人の影が重なった。
勢い良すぎて、かぶっていた帽子が地面にふわりと落ちてしまったけれども。
幸せな時間は、まだ、始まったばかり。
|
|