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風と温もりに抱かれて
「お菓子美味しかったなぁ〜ん♪」
「今年も美味しいお菓子ありがとう。ナナが頑張ってくれたから、すごく楽しいランララになったね」
「でも、ナナはお菓子よりも、リエンさんに喜んでもらえたのがもっと嬉しかったなぁ〜ん♪」
リエンの笑顔に、ナナは満面の笑みを浮かべて答える。
ランララの樹の下で合流した2人は、クロとシロ、2匹の猫と共に、さえずりの泉を訪れていた。
恋人達を祝福するかのように、小鳥達の声が泉の畔に響いている。
「綺麗な泉なぁ〜んね。静かでいいところなぁ〜ん。風も気持ちいいなぁ〜んし」
「泉の畔か……静かで良い所だね、少し休もうか?」
「あ、それなら、あそこに丁度いい木があるなぁ〜んよ」
ナナの指差す先には、青々と葉を茂らせた樹が立っていた。木陰に腰掛けようとして、リエンは地面の冷たさに気付いて眉を微かに寄せた。
「……あ、ここに座ったらナナの体が冷えちゃうかな?」
一瞬考え、リエンはすぐに結論を出した。
「そうだ! ナナ、ここに座りなよ」
そう言って膝を叩いたリエンに、ナナは目を瞬かせた。一瞬遅れ、理解と共に、頬が照れと驚きの赤に染まる。
「え! リエンさんによっかかるのなぁ〜ん?」
「恥ずかしいかな? えぇと……そうそう、俺も寒いから……」
言い訳をしようとし、リエンはそうではないと感じて言葉を改める。
「……っていうのは、言い訳、だけどね……ナナを抱きしめたいんだ。だめかな?」
問いかけるリエンに、ナナはふるふると首を横に振った。
「でも……ううん、こういう日だからこそ、リエンさんに一杯甘えちゃうなぁ〜ん♪」
リエンに背をあずけて腰の上に収まると、ナナはリエンの手を取った。2人のつないだ手と手から、互いの熱が伝わって来る。
「リエンさんのぬくもりが、あったかいなぁ〜ん」
「僕もだよ。ナナと一緒だと、とってもあったかいね……」
微笑みあい、2人はそのまま力を抜く。
「ナナは世界一の幸せものなぁ〜ん……なんだか眠くなってきたなぁ〜ん」
ほっとしたのと暖かさで眠気が来た。
目を閉じるナナを見下ろし、リエンはその髪を撫でてやる。
「あれ……ナナ、寝ちゃったのか。きっと頑張ってお菓子を作ってくれたんだろうな」
きゅっとその体を抱きしめ直したリエンの耳に、ナナの呟きが届く。
「なぁ〜ん……リエンさん……ずっとナナと一緒に……なぁ〜ん」
「ずっとずっと、傍にいるよ……約束する」
約束の言葉を口にし、リエンもナナに続いて目を閉じる。穏やかな風が、眠る2人をそっと撫でていった。
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