● 「はい、あーん☆」「〜っっっ!(真っ赤)」

「あ、そうそう。お菓子を作ってきたから、一緒に食べよ」
 泉で一緒に話をしようといって落ち合い、だんだん話が盛り上がってきたため、フーリがトリュフを差し出した。
 本当はこの日のために勇気を出して作ったものだが、どうしても『受取って下さい!』と言うのが恥ずかしかったため、あくまで一緒に食べるために持ってきた事を強調する。
「ふぇ、フーリちゃん、手作りチョコなの? すごぉい、上手、おいしー。こんなの作れるフーリちゃんってすごいねぇ」
 一方、クーの方は最近、フーリとあまり話をする事が出来なかったため、久しぶりにこうやって一緒にいられるだけでも嬉しかった。
「でも、どうしよう……。クー、お返し用意してないよっ!?」
 はっとした表情を浮かべながら、クーが困った様子で汗を流す。
 せっかく、こんなに美味しいチョコを貰ったのに、『何もしないで言い訳が無い』という気持ちが過ぎる。
 だからと言って、いまからチョコを買いに行ったのでは間に合わないので、何か別の方法を考えなければならない。
「あっ、そーだ。じゃあ、フーリちゃんも一緒に食べればいいよね。はい、フーリちゃんもあーん☆」
 満面の笑みを浮かべながら、クーがフーリにチョコを食べさせる。
 そのため、フーリは一瞬どきっとしたが、ここで焦った顔は見せられないので、恥ずかしさを隠すようにしてぱくっと食べた。
「……まぁまぁ、大丈夫だね」
 緊張しているせいでまったく味が分からず、フーリが誤魔化すようにしてけろっと言う。
 クーの笑顔があまりにも可愛らしかったため、危うく我を失いそうになる、フーリ。
 その笑顔がわざと作ったものでなく、自然と浮かんでいるものなので、余計にクーが可愛くて仕方が無かった。
「えへへ、美味しいねぇーっ」
 その言葉が引き金となって、フーリが勢いよくクーに抱きつく。
「急にぎゅーされたらびっくりなの。でも、楽しいからクーもぎゅー返しだよぅ」
 そのため、クーも幸せそうな笑みを浮かべ、フーリにぎゅっと抱きついた。

イラスト:夜神紗衣