● ランララ聖花祭 〜あなたとお菓子を〜

 淡い色の花が咲き乱れる花園。
 そこで二人はピクニックシートを広げた。
 シートの上には、大小さまざまなお菓子が並べられていく。

 思えば……シルキーは同盟に入って初めてのランララ聖花祭であった。
(「それをミラお姉さまと過ごせるなんて……わたし、幸せっ」)
 隣にいるミラと目が合って、シルキーは嬉しそうに微笑んだ。

 今まで、ランララ聖花祭といったイベントに全く縁の無かったミラ。
 シルキーとこうしていることが、不思議なくらいだ。
 でも、それが心地良く感じる。
「会えてよかった」
 そう囁きながら、注いだばかりの紅茶をシルキーに手渡すミラ。
「そんな……それは私の台詞ですよ、ミラお姉さま」
 恥ずかしそうに俯きながら、シルキーはしっかりと紅茶のカップを受け取った。
「それにしても……このお菓子の数々、お姉さまが全部作ったのですかっ? すごいですっ!!」
「ああ、ちょっと作りすぎてしまっただろうか?」
 ミラの言葉にシルキーはいいえと即座に答える。
「お姉さまのお菓子は、とっても美味しいですから」
 実はシルキー、この日のために前日はごはんを抜いてきている。彼女に抜かりはない。
「そうか。なら、口を開けろ、こぼすなよ」
 さっそくミラは、お菓子の一つを手に取り、シルキーの口元へと運んでいく。
(「口開けて……ですってっ? ……なんだか恋人みたいで、くすぐったいです」)
 照れたように頬を染めながら、シルキーはあーんと口を開いた。そこにミラはそっと、お菓子を入れてやる。
「美味しいです、ミラお姉さま!」
 シルキーの口の中にとろけるような甘さが広がっていった。
「それはよかった」
 雛鳥の餌付のような……いやいや、そんな可愛いシルキーが見られて、ミラもかなり満足している。
「ねえ、お姉さま」
「ん? どうかしたのか?」
「お返し、してもいいですか?」
 お菓子を手に取り恥ずかしそうに、けれど嬉しそうにシルキーが提案する。
「ああ、頼むよ」
 ミラは少し頬を染めながら、シルキーからのお菓子を待つ。
 内心、シルキーの申し出に、可愛くて可愛くて倒れそうになっているのだが、ここはあえて堪えている。なにせ、可愛いシルキーからお菓子を食べさせてくれるのだから。
「お姉さま、あーん」
「あ、あーんっ」
 こうして、二人の甘い時間は、お菓子がなくなるまで続くのであった。

イラスト:青葉 魚月