● いつまでも共に……

「レイメイさんと、こうして並んで……ランララを迎えられるとは思っていませんでした。去年は一人で試練を乗り越え、周りの幸せそうな顔を見つめていただけなのに、今年は……その、こうして一緒に迎えられて……幸せです!」
 ふたりで肩を寄せ合って、さえずりの泉の傍に座り、ニルギンが幸せそうな表情を浮かべる。
 手元には白いハンカチが敷かれており、色とりどりのマカロンと、チョコレートクッキーが置かれていた。
「えっと……木の実をつかったマカロンです。一緒に食べてくれるとうれしいのですが……」
 恥ずかしそうに頬を染めながら、ニルギンがレイメイにお菓子を渡す。
 彼女から受け取ったマカロンを齧り、レイメイもニコッと笑う。
 ……ふたりが出会ったのは、1年半前……。
 今までの出来事を振り返ってみると、自分達が思っている以上に色々な事があった。
 ふたりで同盟諸国に起こった事などを話しつつ、何となくお互いの視線を合わせる。
「いろんな事が起こっていますけれど……私は、貴女の皆の笑顔の為に、頑張ります」
 頬にクッキーをつけたまま、ニルギンがキリリッとした表情を浮かべた。
 そのため、レイメイがクスクスと笑い、ニルギンの頬についたクッキーを取る。
 途端にニルギンの頬が真っ赤になり、ふたりでクスクスと笑う。
 しばらく、ふたりでのんびりした後、ふとした考えが脳裏を過ぎる。
 ……ゆったりと流れる平和な時間。
 それを守るために、戦う冒険者達。
 そう考えると、責任重大だ。
 でも、だからこそ、あんな過酷な場所でも、希望を捨てずに闘い抜ける。
「冒険者になってよかった、と思うときってどんな時ですか?」
 ゆっくりと空を見上げながら、ニルギンが独り言のように呟いた。
「私の場合は……こうして、みんなが平和に祭を楽しんでいる姿を見ていると……そう思うんです」
 ニルギンが彼女を見つめてクスリと笑う。
 心の中で『一番は、貴女の笑顔ですけれど、ね』と呟きながら……。
 そして、ニルギンはレイメイにそっとキスをすると、彼女をつれて別の場所にむかうのだった。

イラスト:笹本ユーリ