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指輪と真珠のチョコレート
去年は、北の大地に旅立っていたため、一緒にいられなかった二人。
だが、その旅も終わり、こうして、二人で過ごせる時間ができた。
そして、迎えるランララ聖花祭。そのせいか、二人の胸は弾んでいて……。
吹く風は、少し肌寒く、吐く息が僅かに白く見えた。
なのに、この女神の木の下に注がれる木漏れ日は、暖かく感じられて。
それもこれも、目の前に大切なあなたがいるから?
二人でこうしていられるだけでも、楽しくてしかたないミズキ。
でも今日は、少し特別な意味も込められていて。
「さて、始めましょうか」
「は、はい」
どきどきと弾む胸の鼓動。
互いの鼓動は早く、期待に胸が膨らんでいる。
(「去年は一緒にいられませんでしたから」)
そっとペルレが取り出したのは、ミズキに渡すためのプレゼント。
「では、私から……」
「ありがとうございます、ペルレ様」
あふれんばかりの幸せそうな笑顔で、ミズキはそれを受け取った。
「あけてもよろしいですか?」
「ええ、もちろんっ」
その中に入っていたのは、丸い球体の形をしたブラックチョコレート。
「そのチョコレート、ブラックパールハートという名前なんです」
名前の意味、真珠の文字。自分の心、その黒さえも包み込んでほしい。
そんな願いを込めて作られたものであった。
さっそくその一つを摘んで、口の中に入れる。
幸せそうな笑みを浮かべて、ミズキは。
「とても……とても幸せな味がします。美味しいですよ、ペルレ様」
その言葉にペルレは嬉しそうな笑みを浮かべた。
ペルレも安心したように嬉しそうな笑みを零して。
と、ミズキも懐から小さな小箱を取り出した。
「それは……」
緊張した面持ちで、その小箱を見つめるペルレ。
「……同盟は今混迷の時、まだそれをなすわけにはいきますまい」
ですがと、ミズキはそっとその小箱をペルレの目の前に差出し、微笑んだ。
「いつか、永遠にともになれるよう、この指輪を贈ります」
受け取ってくれますかと続けるミズキにペルレは。
「あ、ありがとう……ございます」
嬉しそうに幸せそうに微笑んで、ペルレはそれを受け取った。
幸せな時間。甘いひと時。
帰るペルレの指には、ミズキからもらった指輪が輝いていた。
まるで二人を祝福するかのように、きらきらと、きらきらと……。
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