● 宝石言葉は?

 色とりどりの花が恋人達を祝福するかのように出迎える。
 そこは、朝露の花園。
 デートでやってきたレナートとセイカは、子猫達を連れてやってきていた。

「誕生日おめでとうございます、レナートさん」
 セイカはそっと、レナートに誕生日プレゼントを差し出した。
「ありがとう、セイカさん」
 お礼を言ってから、レナートは中身を見てみる。
 箱に入っていたのは、ペリドットと水晶を繋いで作られた、綺麗なお守り。
 腰につけられるアクセサリーにもなるようだ。
 レナートはさっそく、それを腰につけて笑みを浮かべている。
「さて問題。ペリドットの宝石言葉は?」
 と、そこでセイカが、問題を出してきた。
「えーと、なんだったかな……」
 むむむっと、真剣に悩むレナートに、セイカは慌ててこう付け加える。
「べ、別に答えなくてもいいですよ」
 と、そのとき。レナートの頭に何かがひらめいた。
「……あ、夫婦愛だったかな」
 照れた様子でそう答えるレナート。
「だから、全然答えなくてもよかったのに〜〜」
 セイカは更に慌てた様子で、顔を真っ赤に染めている。
「嬉しいな」
 そう嬉しそうな笑顔を見せるレナートに、セイカはまだあたふたしている。
「他にも『幸福』とか『信じる心』とか宝石言葉あるのに……っ! もう……好きに解釈して下さい! ちなみに正解は教えませんっ」
 レナートがピンポイントで言ったその答えは、セイカを慌てさせるのに、充分な威力があったようだ。
 この様子だと、セイカの心の中で決めていた答えは、レナートには教えないつもりらしい。
 それに異論を唱えるのはレナート。
「おや、せっかく問題出してくれたのに、正解はなし? 正解のご褒美をしてくれると思って、頑張って考えたのに」
「しりませんっ!」

 ときおり吹く優しい風が、草花を揺らしていく。
 そして、二人の側では、子猫達も楽しげに戯れている。
 まだレナートとセイカは何かを話していたけれど、草花は変わらず揺れていた。
 そう、レナートの腰につけられた、あのお守りもゆらゆらと、ゆらゆらと。

イラスト:コメスケ