● 幸せな一日の終わりに

 星屑の丘に二人は待ち合わせをしていた。
 最初にたどり着いたのは、カイン。
 けれどもカインは、すぐ別の場所に身を隠す。
 やってくる恋しい人を今かと今かと待ちながら……。

 数分後。ローラインが現れた。
 きょろきょろとあたりを見渡す。
 どうやら、カインはまだ来て……。
「ローライ……ああああ!」
 どさりとカインが空から降ってきた。
 訂正。カインが木から落ちてきた。
「カイン……様……?」
 驚き硬直したものの、ローラインはカインへと手を差し伸べたのであった。

「来て下さって……ありがとうございます……カイン様」
 緊張した面持ちで、ぺこりと頭を下げるローライン。
 そして、持ってきたポシェットから包みを取り出した。
 いつにも増して真剣な表情で見上げる。
「受け取って……いただけますか?」
「え? いいの? さっそく開けてもいい?」
 カインの言葉にローラインは、こくりと頷いた。
 包みを開けると、そこには美味しそうなトリュフが入っていた。
「わ、トリュフ! ありがとー♪」
 とても嬉しがるカインにローラインも僅かに瞳を細めたようだった。
 けれどもカインの喜びは止まることはなく。
「ローラインも♪ はい、あ〜ん♪」
「え?」
 トリュフを一つ差し出して、あーんするよう催促するカイン。
 ローラインは驚いていたが、おずおずと。
「あーん」
 その口に甘いトリュフが入ってきた。

 いつの間にか、甘い時間は夕暮れに染まっていた。
「ここ、見晴らしがいいんだよね……そうだ♪」
 丘の上で眺めながら、カインは良いことを思いついた。
「……あっ……」
 ひょいっとカインは側にいたローラインを抱き上げ、肩車した。
「今日はつきあってくれてありがとね♪ 楽しかった♪」
 夕日に染まる風景を眺めながら、カインはそうローラインに告げる。
「わたくしも……楽しかったです……カイン様」
 大好きなカインの肩車にローラインは、初めて微笑んだ。

イラスト:ノブ