● Un parti du the sucre

 綺麗な花畑が二人を迎える。
 けれど、花畑が迎えるのは、レインとロレッタだけではなかった。
 たくさんのカップル達をも迎えていたのだ。
「……ランララ様のお祭りなのに、お花はそっちのけですかねー」
 ロレッタは辺りを見渡しながら、思う。
(「確かにお花一杯でボクが好きそうな所ですが……」)
「このカップルさん達は、何処から集まってくるですか?」
 思わずロレッタは、呟いた。

「……流石はランララ聖花祭だ」
 レインは前に行われたフォーナ感謝祭を思い出す。どうやら、そのときよりも人手が多いようだ。
 これでは迂闊に動けない。子供扱いもアレだが……。
「ロッティ、余りウロウロすると迷子に…………!?」
 なんと既に居ない!
「折角デートを楽しもうと思ったのに、これではっ……」
 ばっちり本心を言葉にしているが、幸いにしてロレッタはここにいない。
「いや、そうではなくて!!」
 レインはすぐさま、迷子になったロレッタを探しに駆け出すのであった。

 さて、当のロレッタだが。
「こんなところに、こんな店があるなんて、思わなかったのです」
 その手には、愛らしいミルキーピンクのノソリンのぬいぐるみが。
 ちなみにロレッタに言わせると、このぬいぐるみは激レアなんだそうだ。
「あれ? レインはどこです?」
 お店に突撃して、目的の物を手に入れた時間。約15分。
 その間にロレッタは、見事に迷子になっていた。

 そして、数時間後。
 レインが花畑を楽しむロレッタを無事保護し、空いていたベンチに座って休憩していた。
「……僕は……ノソぐるみに負けたのか」
 ロレッタの戦利品を前に、レインはがっくり肩を落とす。
 けれど、メインはまだお披露目していない。
 気を取り直して、レインは用意していたケーキや飲み物を用意する。
「と、とにかく……ロッティ、ケーキにしようか」
「わあ、ケーキなのです。美味しそうなのです!」
 嬉しそうに声をあげるロレッタ。
 そんなロレッタの幸せそうな姿を見れただけで、当のレインはいっぱいいっぱい。
 ロレッタの肩を抱くことはできなかったが、こうして、レインはロレッタと一緒に幸せなひと時を過ごしたのであった。

イラスト:日高 潤