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木漏れ日の下で
木漏れ日の下でマナヤは待っていた。
その手にはバスケットが握られている。
マナヤはちらりとバスケットを見て、淡く微笑んだ。
もうすぐ来るあの人を思って……。
少し遅れて、クロウがやってきた。
「スミマセン、お待たせしてしまいマシタカ?」
「ううん、さっき来たばかりだよ」
そういうマナヤにクロウは安心したように微笑む。
「では、座りマショウカ」
「うんっ」
二人は並んで、木の下に座った。
木漏れ日が心地よい。
マナヤはさっそく、バスケットの中からケーキを取り出した。
美味しそうな手作りのケーキ。
「これは美味しそうデスネ!」
「そういってもらえると嬉しいよ。……はい、お兄ちゃん」
切り分けたケーキをクロウに手渡すマナヤ。
「ありがとうゴザイマス」
と、マナヤの手が止まった。
「あっ……フォーク、一本しか持ってこなかったみたい」
「エッ!?」
「そうだ、お互いで食べさせあうっていうのはどうかな? いいでしょ、お兄ちゃん!」
有無を言わせないようなその顔に、クロウは頷くことしかできない。
「はい、あーん」
「あ、アーン……」
頬を染めながら、クロウは口を開ける。
その口の中に甘くて美味しいケーキの味が広がった。
おしゃべりも弾み、ケーキはあっという間になくなってしまった。
程よい木漏れ日に満足したお腹。
気づけば、マナヤはクロウの膝を枕にして眠っていた。
幸せそうに眠っている彼女を見ながら。
(「ここに生き続けて、守るべきものが出来マシタ……」)
クロウは優しく微笑んでいた。
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