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Sous le clair de lune
ランララ聖花祭の当日。
ヒースはモニクを朝露の花園に呼び出した。
朝露の花園を選んだのは、モニクが花を好きだから……。
待ち合わせの時間は、夜。
月と星明りが照らされた朝露の花園はとても美しく、幻想的な雰囲気が漂っている。
普段は無表情に近いモニクだが、花園の雰囲気が気に入ったのか、のんびりと辺りを眺め、少しだけ嬉しそうな表情を浮かべていた。
ヒースはそんなモニクを温かく見守り、優しげな笑みを浮かべている。
その間も、モニクはヒースをあまり気にせず、背を向けたまま花を眺めていた。
未だにふたりは『恋人』と呼ぶほどの関係にはなっていない。
それどころか、モニカは若干ヒースを警戒しているところがある。
……とは言え、今日はランララ聖花祭。
そんな事など忘れて、彼女と過ごそうと考えている。
だが、彼女と一年半近く会っていなかった事もあり、若干警戒心を抱かせたままだったので、この場所に来てくれるのかさえ心配になっていた。
とりあえず、モニクがここに来てくれたので、一先ず安堵。
月明かりに照らされた花園の風景も、気に入ってもらえた……はず。
軽く挨拶を交わした後、何を話せばいいのか思いつかず、ただ輝く夜空を無言のまま眺めた。
その淡い光に照らされた朝露の花園……。
時折、モニクの様子を見ながら、流れていく時間を過ごす。
(「……らしくないな」)
自分自信でもそう思うが、そもそも戦う事しか知らずに育ち、今までそれが普通だと思って暮らしてきた自分が、誰かにここまで執着する事自体が、らしくないと言えばらしくない。
それが、いつから変わり始め、いつから変わったのか、そんな事は解らないし、意味が無いのかも知れない……。
しかし、以前とは違う自分自身が、ここに存在している事も、確か。
そう思って、ヒースは意を決して、モニクに呼びかける。
「……モニクさん。私は、貴女の事が好きらしい。だからどうしたいのかとか、正直今の私自身にもよく解らないのですが、それだけは憶えておいてほしい。今日は久し振りに会えて嬉しかった。ありがとう」
嘘偽りの無いヒースの言葉。
その言葉を聞いて、モニクが優しく笑ったように見えた。
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