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We have just married
(「……遅かれ早かれ、こんな展開になると思っていた分、割と気を楽にして臨めるかな……? 関係的に腐れ縁から夫婦になるだけで、二人の仲は変わらないと思うしね……」)
そんな事を考えながら、グラムが黒いタキシード姿で、女神ランララの木に立った。
この展開にはさすがのミュカレも『まさか』と思ったが、『何とかの納め時』という言葉もあるので、示し合わせたかのように、ウエディングドレス姿でマントを羽織り、女神ランララの木にむかう。
女神ランララの木には、タキシード姿のグラムが立っており、彼女に対して目配せで合図を送る。
凍るように冷たい夜風が、ミュカレの頬をそっと撫でた。
「……本気、ですのね? 後悔しませんわね? 後で『これは冗談だ』って言うのはなしですわよ。こっちも覚悟を決めてきたんですから……。中途半端な気持ちで、こんな事をしようと思ったのなら、止めてくださいね」
グラムに念を押すようにして、ミュカレが緊張した様子で尋ねる。
もしかしたら、望んでいるような答えは返って来ないかも知れない。
逆に往生際が悪いと言われそうな気もするが、それでもここで聞いておかなければ、一生後悔してしまいそうだった。
「僕はこれが初めてではないからね……。それがどれだけ重い事か分かっているつもりだよ……?」
自分の気持ちが中途半端でない事を示し、グラムが真剣な表情を浮かべて彼女の顔を見る。
その言葉も聞いてミュカレは心底ホッとした表情を浮かべ、女神ランララの木の下でグラムと永遠の愛を誓う決意をした。
「さてさて、これを知った皆は、どんな顔をするだろうね……。ねっ、ミュカレ……」
胸元を飾り立てるために薔薇を一本失敬し、グラムがその場で結婚式を執り行い、ミュカレにそっと語りかける。
「さぁ? でも、皆、驚くのは間違いないでしょうね。一番のサプライズイベントになると思いますもの」
幸せそうな表情を浮かべ、ミュカレがグラムに答えを返す。
そして、グラムは愛しげにミュカレを見つめ、彼女の手の甲に優しくキスをするのであった。
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