●
スペシャル隠し味は愛情です
ランララ聖花祭、当日。
ユイリンは朝露の花園の中にシートを敷き、サコンと寄り添うようにして座っていた。
今年のお菓子は、マウサツ時代に習ったピンクのかるかん。
腕によりをかけて作り上げ、可愛らしいピンクの箱に収めてある。
この場所で女神様ではなく、サコンに誓いを立ててから、三年目。
まさか本物の女神様が現れ、あんなフランクに恋を応援されるとは、夢にも思わなかった。
……だからなのかも知れない。
こうして、サコンと恋人同士でいられるのは……。
まるで夢みたいに、ふわふわした感覚。
その事を考えるだけで、頭がクラクラとする。
だからと言って、看護婦の不養生というわけではない。
「おいしいですね、これ」
ユイリンの作ったかるかんを齧り、サコンがニコリと微笑んだ。
その姿をウットリと見つめ、ユイリンが顔を真っ赤にする。
途端にユイリンの心臓がグランスティードに乗っているかと錯覚するほど、一気にバクバクと高鳴った。
さらさらと春風にゆれる髪も綺麗!
お菓子食べてる横顔も涼しげ!
ついさっき耳元で囁かれた声も熱いくらい素敵!
夜の空みたいな目瞳も、綺麗な指先も、何もかもがたまらない。
このまま好きなところを上げ続ければ、次の日になってしまうくらい、好きなところが沢山あった。
(「ちょっと悪戯で意地悪なところも好き」)
その時の事を思い出すと、思わずじたばたしてしまう。
(「私を庇ってくれる広い背中もかっこいい!」)
こうなってしまうと止まらない。
なぜなら彼女はそれだけサコンの事が好きだから。
どんなに月日が経っても、もっと彼の事を知りたいと言う気持ちが尽きない。
そんな尽きる事の無い愛情を特別な隠し味として、中毒になるほどお菓子の中にいれてしまおうという気持ちが過ぎる。
「今度はもっといっぱいお菓子、つくってきますね。もちろんスペシャルな隠し味、いーっぱいいれますから!」
もっとサコンが好きになってくれると信じ、ユイリンが幸せしそうな表情を浮かべた。
|
|