● *Amoroso*

 夜の朝露の花園。
 月明かりに包まれながら、シアは思っていた。
 二人でこうして、ランララ聖花祭を過ごすのも、何回目になるのだろう、と。
 いつものように待ち合わせて、互いを見つけあうと、いつものように笑顔を浮かべる。
「シアちゃん、お誘いありがとうなんよ」
「こちらこそ。来てくださってありがとうございます」
 そして、幸せな抱擁。
 感じる暖かさが心地よい。

 一緒に過ごす時間は、とても幸せで穏やかで……シアをとても優しい気持ちにしてくれる。
 月とお星さまに見守られた、花園でのデート。
 今だけは、お互いにお互いを独り占め。

「アデイラさん、どうぞ」
 そういって、シアが手渡したのは、今年のプレゼント。
 薔薇や蝶のチャームが、可憐に揺れるパールブレスレットであった。
 そのパールの一粒一粒には、シアの想いが込められている。
「とっても綺麗やね……」
 さっそく、アデイラはそのプレゼントを手首につけてみた。
 アデイラが腕を動かすたびに揺れる、薔薇や蝶のチャーム。
 それを見るたび、シアのアデイラへの愛しさが募っていった。
「アデイラさん、いつもありがとう……」
 シアは、日頃の感謝の気持ちを込めて、アデイラの頬に口付けを送る。
「あたしの方こそ、ありがとうなんよ」
 アデイラはシアの髪に優しく口付けを交わす。
 シアにとって、それはくすぐったくて、あたたかくって、とても幸せなもの。
 あっと、シアが思い出して、バスケットを取り出した。
「ランララだから、チョコマフィン作ってきたの」
「うふふ、シアちゃんのチョコマフィン〜♪ ありがとう、ほんま嬉しい」
 アデイラの言葉にシアは、幸せそうに微笑んだ。

 話したいことが沢山、沢山あって。
(「我儘を承知で、もう少しだけね……ね。独り占めさせてほしいの」)
 大切な想い出を、その胸に抱きしめて。
 それが、これから先の戦いを乗り越える力になるから……。

イラスト:華谷百花