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*Amoroso*
夜の朝露の花園。
月明かりに包まれながら、シアは思っていた。
二人でこうして、ランララ聖花祭を過ごすのも、何回目になるのだろう、と。
いつものように待ち合わせて、互いを見つけあうと、いつものように笑顔を浮かべる。
「シアちゃん、お誘いありがとうなんよ」
「こちらこそ。来てくださってありがとうございます」
そして、幸せな抱擁。
感じる暖かさが心地よい。
一緒に過ごす時間は、とても幸せで穏やかで……シアをとても優しい気持ちにしてくれる。
月とお星さまに見守られた、花園でのデート。
今だけは、お互いにお互いを独り占め。
「アデイラさん、どうぞ」
そういって、シアが手渡したのは、今年のプレゼント。
薔薇や蝶のチャームが、可憐に揺れるパールブレスレットであった。
そのパールの一粒一粒には、シアの想いが込められている。
「とっても綺麗やね……」
さっそく、アデイラはそのプレゼントを手首につけてみた。
アデイラが腕を動かすたびに揺れる、薔薇や蝶のチャーム。
それを見るたび、シアのアデイラへの愛しさが募っていった。
「アデイラさん、いつもありがとう……」
シアは、日頃の感謝の気持ちを込めて、アデイラの頬に口付けを送る。
「あたしの方こそ、ありがとうなんよ」
アデイラはシアの髪に優しく口付けを交わす。
シアにとって、それはくすぐったくて、あたたかくって、とても幸せなもの。
あっと、シアが思い出して、バスケットを取り出した。
「ランララだから、チョコマフィン作ってきたの」
「うふふ、シアちゃんのチョコマフィン〜♪ ありがとう、ほんま嬉しい」
アデイラの言葉にシアは、幸せそうに微笑んだ。
話したいことが沢山、沢山あって。
(「我儘を承知で、もう少しだけね……ね。独り占めさせてほしいの」)
大切な想い出を、その胸に抱きしめて。
それが、これから先の戦いを乗り越える力になるから……。
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