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ふたつ重なる心の温度
夜空に星が浮かぶ頃。
二人は女神の木の下で待ち合わせしていた。
危うく、すれ違いそうになったが、慌てて駆け寄り難を逃れた。
「もうちょい気づくの遅かったら、危ないところやったな」
「ちょっと驚いたなぁ〜ん」
ヨシノとクレナは互いに顔を見合わせ、くすっと笑う。
女神の木の下から、星屑の丘へ。
二人が一緒に見上げる空。
まるで、こぼれて来そうなほど、たくさんの星が夜空で輝いている。
「こんな伝え方しかできないけれど……」
クレナはそういって、ヨシノの顔を見つめる。
「これからもずっと、一緒にいたいなぁ〜ん。お互いに守り合いながら時を重ねていきたい、そう思ってるなぁ〜ん」
ヨシノから視線を外さずに、そう伝えて。
一方、ヨシノはというと、照れたように視線を泳がせていたけれども。
「う、うん……! ありがとうや……俺もずっと一緒に居っていたい。隣で並んで、歩いて行けたらええと思う」
はっきりとそう、クレナに伝える。
通じ合う気持ち。重なり合う想い。
二人は幸せそうに、安心したように微笑んだ。
「何も伝えられないまま、会えなくなってしまったらどうしようかと思ってたなぁ〜ん。本当に、本当に有難う……なぁ〜ん」
そんなクレナをヨシノはぎゅっと抱きしめた。
「大丈夫、俺クレナ大好きやから、大事にして忘れたりせぇへんからな」
力強い一言にクレナは嬉しそうに瞳を細める。
「今日はホンマにありがとうな」
ヨシノの最後の言葉は、クレナの耳元で囁くように。
そっと顔を上げて、ヨシノを見るクレナ。
伝わる温もりにクレナも安堵した微笑を見せる。静かに頷いて見せて。
「今日会えて、想いをちゃんと伝えあう事ができて、すごく嬉しいなぁ〜ん」
体をヨシノに預けるように寄り添う。
「有難う、これからも宜しくねなぁ〜ん」
静かに重なる手と手。
繋がれた想いはきっと、いつまでも続いていくだろう。
暖かな温もりを感じながら、その手はずっと離さぬように……。
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