● 大好き!

 数多くの試練を乗り越え、ミンリーシャン(以下ミンリー)とハイルは、朝露の花園で他愛のない会話をしつつ初デートをしていた。
 その途中でミンリーが『質問があります』と言ってハイルから手を離し、背中を向けたまま少し歩いたところで立ち止まる。
「今日の大事にこのひと時……、本当にお相手が私でよかったですか?」
 彼女の言葉には、若干の不安が混じっていた。
 ……本当ならば聞くべきではないかも知れない。
 だが、聞かずにはいられなかった……。
「ミンリーシャンはどうだったと思う?」
 彼女の問いかけに、ハイルが問いかけで返す。
 ミンリーは……、振り向く事が出来なかった。
「ミンリーシャン、こっちみて!」
 ハイルの力強い言葉が辺りに響く。
 背後に彼の気配を感じ、ミンリーがゆっくりと振り返った。
「よかったに決まってるよ! 思い切って手紙を出してよかったって本当に思ってる! ミンリーシャンがどう思っていようと俺は、今すごーく幸せだよ! 有難う!」
 勢いよくミンリーを両腕で抱きしめ、ハイルが最高の笑顔で答えを返す。
「ぁり……とぅ……、有難う、有難うございますっつ♪ 嬉しい……♪」
 いきなり抱きつかれて吃驚しつつ、ミンリーが嬉しそうにハイルを見上げる。
「それで……あの……ちゃんと言っときたいと思ってたんだけど……」
 緊張した様子で頬を掻きながら、ハイルが笑顔を浮かべて言葉を選ぶ。
 ミンリーも何事かと思い、ハイルに対して視線を送る。
 ハイルはほんの少し間を開け、大きく深呼吸をしてから、
ミンリーシャン・リーユワンさん!俺とつき合ってもらえますか」
 と告白した。
 そのため、ミンリーはキョトンとした表情を浮かべ、しばしの沈黙の後、
「はいっ♪ 喜んで! 宜しくお願いしますっ」
 と答えを返す。
「ほ、ほんとー? ミンリーシャン大好き!」
 いまの自分がとても幸せである事を実感し、ハイルが満面の笑みを浮かべる。
「私もハイルさんが大好きですっ♪」
 そして、ミンリーは恥ずかしそうに頬を染め、ハイルと一緒に幸せを噛み締めた。

イラスト:衣谷了一