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花とお菓子と甘い時間を
恋人達で賑わう朝露の花園で、ふたりは静かに時間を過ごしていた。
サフィーアはアシュレイに紅茶を用意し、アシュレイはサフィーアから受け取った、お菓子の封を開ける。
それはチョコ味の手作りマドレーヌ。
「……少し場所を移動するか」
だんだん人の目が気になってきたため、サフィーアがアシュレイの手を引いて、まったく人がいない花園の外れまで歩いていく。
「ここならば、人の声も遠いし、私達の会話が聞かれる事もないはずだ」
ゆっくりと辺りを見回した後、サフィーアがホッとした表情を浮かべ、先ほど用意したお菓子をアシュレイに渡す。
「朝露の花園の外れとは言え、……悪くない場所ですね。確かにここなら、人の目を気にせず、のんびりする事が出来そうです」
屈託の無い笑みを浮かべ、アシュレイが辺りに咲き乱れた花を眺める。
その花の中にはサフィーアと同じ名前の薔薇も咲いていた。
「ああ、さっきの場所だと、どうしても人の目が気になってしまうからな。そんな状態でお茶を飲んだところで、美味いわけが無い」
ようやくお茶の準備が終わり、サフィーアが穏やかな笑みを浮かべる。
「そんな事はありませんよ。私はサフィーアと一緒なら、どんな場所であったとしても、お茶が美味しく感じられますから……」
まったく躊躇う事もなく、アシュレイが心の中で思った事を口にした。
今日がランララ聖花祭だった事もあり、普段は言えない事でも、気兼ねなく言う事が出来そうだ。
「面と向かって、そんな事を言われると、恥ずかしいな。だが、こうやって一緒にランララ聖花祭に参加できてよかった」
優しく微笑みかけながら、サフィーアがアシュレイに口付けをする。
「ええ、私も同じ気持ちです……。サフィーアと一緒にいる事が、私にとっての幸せですから……」
アシュレイもそれに応えるようにして、優しく彼女を抱きしめた。
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