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温もりの中で
穏やかな風が吹く中、リラとファルクは女神の木の下で、試練が大変だった事を笑いあい、無事に待ち合わせ場所で会えた事を喜んだ。
「ところで冷えませんか?」
優しく囁きかけながら、ファルクが自分のマントをリラにかける。
「え、あ、ええと……少しだけ」
遠慮がちに答えるリラ。
「では、こうして……、毎回やってる気もしますが……」
苦笑いを浮かべながら、ファルクがマントを広げて、彼女の体を包み込む。
「あ、ありがとうございます。暖かいですから……私は、毎回でも……え、いえ、えっと……」
照れた様子で、どもるリラ。
そこから言葉が続かない。
「ご希望でしたら、こういう場でなくてもして差上げますよう?」
爽やかな笑みを浮かべ、ファルクがリラの肩を抱く。
「そ、そんな……ご、ご希望……し、しますよ、いつだって、もう」
途端にリラの顔が真っ赤になり、必要以上にオロオロとした。
「ごめんなさい、ちょっと意地悪だったでしょうか」
彼女に微笑みかけながら、ファルクがリラの手を握る。
「……でも、本当に暖かいですから……こうしているの、好きです」
いつもより積極的なファルクに戸惑いつつ、リラが恥ずかしそうに頬を染めた。
「ええ、私も……、こうしているのも、リラさんの事も……」
最後は小声で『好きです、愛しています』と付け加え、ファルクがリラを見つめてクスリと笑う。
一瞬、リラはファルクが何といったのか分からず、『はい……?』と首を傾げて聞き返す。
「リラさんが好きです、愛してます……」
今度はリラにも聞こえるように、ファルクが耳元でそっと囁きかける。
「……聞こえました。嬉しい……今日は、女神様が見ていて下さるから、いつもよりきっと何倍も幸せですよ」
ランララの女神に感謝しながら、リラがファルクに抱きついた。
普段はとても奥手なのでおおっぴらにイチャイチャしないふたりだが、女神が祝福してくれるのなら、いつもより素直になれそうである。
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