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女神の木の一時
「……ん、ここは風が気持ちいいですなぁ〜んね……」
幾多の試練を乗り越え、女神の木に辿り着いたミルフォートは、新鮮な空気を満足するまで吸い込んだ。
心地良い風が頬を掠る。
それだけで今まで乗り越えてきた試練の辛さが、少しずつ癒されていった。
「確かに風が気持ちいいな。こんな日だからかも知れないが……」
ミルフォートが作ったチョコレートクッキーを齧り、マサミが『このクッキー、美味しいな』と感想を述べる。
「チョコクッキー……、ちょっと自信がなかったですなぁ〜んけど……、美味しいって言って貰えてよかったですなぁ〜ん……」
ホッとした表情を浮かべながら、ミルフォートがクスリと笑う。
マサミにチョコクッキーを渡すまで、『美味しくないって言われたらどうしよう』と不安になっていたが、この様子ではその心配もまったくなさそうだ。
「マサミさん、ちょっと肩借りていいですなぁ〜ん……?」
恥ずかしそうに頬を染めながら、 ミルフォートが甘えるようにして声をかける。
「ああ、好きにしな」
穏やかな笑みを浮かべながら、マサミが力強く彼女の身体を抱き寄せた。
「……ん、心地いいですなぁ〜んね……。なんだか、ずっとこうしていると凄く、落ち着きますなぁ〜ん」
マサミにすべてを任せるようにして寄りかかり、ミルフォートが幸せを噛み締める。
最初はちょっと恥ずかしく思っていたが、時間が経つにつれてそんな事を考えている暇がないほど、幸せな気持ちが全身を包み込む。
「ミルと一緒にいると、結構安らげるな……。これから先、大きな戦いがあるかもしれない……。……けど、ミルがいれば、帰って来れる気がする。その時にまた、こうしていられたらいいよな……」
今までの出来事を思い出しながら、マサミがミルフォートの肩を抱く。
「ずっとこうしていたい気分ですなぁ〜ん。……マサミさん、大好きですなぁ〜ん……」
恥ずかしそうに頬を染め、ミルフォートが自分の素直な感情を口にする。
途端に恥ずかしさが込み上げ、何も考える事が出来なくなった。
「……ミル、出合ってくれて、ありがとうな……」
そして、マサミはミルフォートの顔を見つめ、そっと彼女の額にキスをした。
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