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ドッチボール部【バレンタイン編】
「一体、こんな所でどうしたんですか〜?」
星屑の丘でウロウロとしていたリーナを見つけ、ティータが不思議そうに首を傾げて声をかけた。
リーナの話では恋人にどうやってチョコを渡していいのか分からず、途方にくれてようである。
そのため、ティータが『それならば、いいアイデアがありますよ〜♪』と答えて笑みを浮かべ、リーナにそっとピンク色の長〜いリボンを手渡した。
しかし、リーナにはリボンの使い方が皆目見当がつかず、伸ばしたり引っ張ったりして、自分なりに答えを見つけようと必死な様子。
そうしているうちに考える事さえ億劫になり、助けを求めるようにしてティータに視線を送る。
「えーっと……、これはどうやって使うの?」
『これを渡した本人であるならば、何か知っているはずである』という前提のもと、リーナがティータに対して問いかけた。
「このリボンを自分の体に巻いてラッピングした上で、自分ごとプレゼントにするのが今の流行であり、とてもインパクトがあるのですよ〜♪」
まったく悪びれた様子もなく、ティータがとんでもないデマを、リーナに吹き込んだ。
その途端にリーナの表情がガラリと変わり、『えっ?』と言葉を漏らして、ピンク色のリボンを身体に巻いている自分自身の姿を思い浮かべる。
そのせいで恥ずかしい気持ちが全身に押し寄せてきたが、『今の流行なら仕方がないか』と自分自身に言い聞かせ、やってみようかと考え込む。
(「ふふふ……、うまく行きましたわ」)
怪しく瞳をキラリと輝かせ、ティータが不気味にニヤリと笑う。
とりあえず、作戦は成功。
後は放っておいても、彼女が望む方向に突き進んでくれるはず。
しかし、リーナはそんな事など露知らず、手に取ったピンク色のリボンを使い、どんな結び方が効果的なのか、さっそくシミュレーションをし始めた。
「ところで、そのチョコレートは? ひょっとして誰かに渡すとか?」
その途中でティータがチョコレートを持っている事に気づき、何気ない疑問を投げかける。
だが、ティータは『それは企業秘密ですよ〜♪』と答え、最後まで誰に渡すのか教えてくれなかった
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