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ランララ聖花祭 -花の舞う丘で-
「わぁ、雪が積もっているみたいー」
瞳をランランと輝かせ、チィラが朝露の花園を走り回る。
辺りは一面、真っ白な花畑。
彼女の言う通り、まるで本当に雪が積もっているようである。
「わぁーい」
満面の笑みを浮かべながら、チィラが勢いよく花畑の海にダイブした。
途端に大量の花が舞い上がり、花びらがはらはらと落ちていく。
(「……綺麗ー」)
花畑に埋もれたまま、チィラが青空を眺めた。
舞い落ちる花びらが、彼女の心を和ませてくれる。
しばらくの間、時間を忘れて、花の中に埋もれた。
ゆったりと流れる時間……。
まるで他の花と一緒になったような一体感……。
……チィラはとっても幸せな気分。
「こうやったら、もっとよく見えるよ」
真っ白な花に埋まったチィラを抱き上げ、リトがゆっくりと辺りを見回した。
「わぁ、すごーい」
チィラは先程とは違って見える景色に感動し、嬉しそうに声を上げている。
ふと、彼女の視界に紋白蝶が横切った。
まるで雪の結晶が舞い上がるようにして……。
「あっ、紋白蝶ー」
紋白蝶を目で追いかけ、チィラが思わず手を伸ばす。
「わっ、わっ、わぁ!」
そのせいでリトが派手にバランスを崩し、彼女を巻き込むようにして花畑に倒れ込む。
次の瞬間、ふたりの唇が重なり合った。
……一瞬の沈黙。
見詰め合う、ふたり。
途端にリトの顔が真っ赤になる。
「えっ、うわぁ……!!」
リトは慌てて離れようとしたが、彼女とキスをした事で緊張がピークに達し、一気に意識が遠のいた。
それでも、唇に残った感触だけは鮮明に残っており、恥ずかしい気持ちでいっぱいになっていく。
「あ、あれー? 大丈夫ですかー?」
きょとんとした表情を浮かべ、チィラがリトの顔を覗き込む。
その間もリトは顔を赤らめ、グルグルと目を回すのであった。
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