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星降る空の下で―
マシェルがフラウウインド調査隊に参加する事になったため、ほとんど参加を諦めていたランララ聖花祭。
だが、隔離される予定が少し先になったおかげで、思いがけず会う事が出来るようになったため、その喜びもひとしおであった。
その反面、ランララ聖花祭に参加するつもりが無かったので、今年は手作りのお菓子を用意する事が出来なかったようである。
その代わり、星屑の丘で一緒に飲むための赤ワインを用意し、バスケットの中にはワインオープナーと、小さめのワイングラスをふたつ入れた。
いまにも星が降りそうなほど沢山ある星空の下、彼女がプレゼントした赤ワインをキースが開け、ふたりでささやかに乾杯。
あまり甘くないワインを選んだ事が功を奏し、キースも満足した様子で喜んでくれた。
「……マシェル」
赤ワインを飲んだ事で暖かくなった彼女の頬をキースが触れ、マシェルも同じようにして彼の頬に手を触れ、お互いの温もりを確かめ合う。
きっと、赤ワインを飲んでいなかったとしても、こうしているだけでふたりならば暖かい……。
そして、マシェルはいままで口に出来なかった事を語り出す。
調査隊に入ってから伝えていなかった事……。
こんなにキースが大好きなのに、フラウウインド調査隊への参加を、選んでしまった事……。
「離れて寂しい事は知っているはずなのに、ごめんなさい……」
マシェルの言葉に、キースが静かに首を横に振る。
「行きたいと思った気持ちを大切にして欲しい。俺もマシェルの傍にはいたいと思う気持ちがあったが、それと同じくらい行かなくてはならないという気持ちが強かったからな」
その言葉がマシェルには何よりも嬉しかった。
キースも過去に二度ほど特務参加経験があるため、いまの彼女と同じような心境だったのかも知れない。
そこまで話すとキースは、マシェルに突然キスし、しばらくの間、辺りを沈黙が支配した。
「怪我をしないで帰って来られるおまじないだ」
驚くマシェルに、キースから送られた言葉。
それがただただ嬉しくて、マシェルはキースに抱きつき、彼もそれに優しく応えてくれた。
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