● sweet * sweet

 夫婦になってから、初めてのランララ聖花祭。
 ランララ聖花祭には今までにも何度か参加した事があるのだが、今回のようにしっかりと計画を立て参加するのは、おそらく初めての事である。
 そのせいか、恋人でいた頃よりも緊張し、逆にどきどきしているようだ。
 一応、プレゼントはミリアからカイに手渡す予定になっているが、せっかくのお祭りという事もあり、ふたりとも別々の試練に挑み、さえずりの泉で待ち合わせする事になった。
 幾多の試験を乗り越え、女神ランララの木にやってきたのは、ミリア。
 どうやら、ミリアは朝早くから試練に挑んでいたらしく、カイよりも早く女神ランララの木に到着したようである。
 ミリアは女神ランララの木にお菓子を奉納した後、待ち合わせ場所であるさえずりの泉にむかう。
 さえずりの泉では沢山の鳥達がさえずっており、まるで泉が宝石のようにキラキラと輝いている。
「悪い、待たせたかな?」
 それから少し経った頃、カイが試練を乗り越えて、さえずりの泉にやってきた。
「私もさっきついたばかりなの」
 ミリアも笑顔を浮かべて答えを返し、人気の無い場所を選んで、横に並ぶようにして座る。
「はい、プレゼント」
 淡い桜色の布包みに結ばれたピンクと赤いリボンを解き、ミリアがオレンジやさくらんぼのドライフルーツにチョコを絡めたお菓子をカイの口に持っていく。
 カイは恥ずかしそうにあーんと口をあけ、彼女の手作りチョコを口にした。
「……何か、やっぱりこういうのは気恥ずかしいな」
 程よい甘さに舌鼓を打ちつつ、カイが彼女にもチョコを食べさせる。
「そうね」
 ミリアもそれが嬉しかったのか、とても幸せそうな表情を浮かべて、カイにコクンと頷いた。
 そんなミリアの顔を見て、カイも照れた様子でクスリと笑う。
 それから、ふたりで寄り添って小鳥のさえずりに耳を傾け、他愛の無い話をしながら、穏やかな時間を過ごす。
 そんな何気ない事であっても、愛する人と一緒であれば、幸せを感じる事が出来るのだった。

イラスト:松宗ヨウ