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相想う
(「結局、時間も場所も決まらなかったな。まぁ、忙しいようだから、ゆっくりで良いだろう」)
そんな事を考えながら、タケルがゆるゆると歩いて星屑の丘を目指す。
タケルが星屑の丘に着いたのは、暗くなってから……。
(「まぁ、なるようになるだろ」)
街の明かりや夜空が綺麗に見える場所を探し、タケルが人気の無い所を見つけてぼんやりと過ごす。
それから、しばらくして……。
メリーナが激しく息を切らせてやってきた。
彼女はどうしてもランララ聖花祭の当日に、一生懸命作ったフリーズドライの苺のチョコレートを渡したかったらしく、タケルから届いた手紙の返事も出せずにいたようだ。
そうしているうちにランララ聖花祭の当日を迎えてしまい、日中の用事を済ませた頃には、夜もすっかり更けてしまい、不安な気持ちに襲われていた。
最悪の場合はタケルが帰ってしまっているかも知れないが、このまま何も渡さずにランララ聖花祭を終わらせてしまうわけにも行かないので、わずかな可能性にかけて星屑の丘まで来たようである。
(「……タケルさん」)
彼から貰った手紙と希望を胸にして、メリーナがゆっくりと辺りを見回した。
そのたび、不安がどっと押し寄せてくるが、深呼吸をして何とか心を落ち着かせ、約束の場所でタケルの姿を探す。
「どなたかお探しですか?」
彼女の背後に立って少しおどけた様子で声をかけ、タケルが笑みを浮かべて勢いよく抱えあげる。
その途端にメリーナの心の中で渦巻いていた不安が取り除かれ、ホッとした気持ちと共に自然と笑みが零れた。
「あ、あの……、私……」
そこまで言って、言葉が続かない。
何かを言おうとするたび、嬉しい気持ちで一杯になり、ぽろぽろと涙が零れてくる。
「会えましたねぇ」
彼女が言いたかった事を代わりに述べ、タケルがしばらく会えなかった寂しさから、メリーナに頬擦りをする。
メリーナも旅団を離れてしまってから、タケルと毎日会う事が出来なくなっていたため、そんなささやかな幸せをとても嬉しく思うのだった。
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