●
3度目の聖花祭 〜甘い不意討ち〜
「まずは、奉納だったな」
「はい、そうです」
ラムナの言葉にライは頷く。そっと女神の木にお菓子を奉納し、二人は笑みを浮かべた。
今日で丁度、二人が恋人同士になって2年。
2年前のあの日と変わらず……いや、あの時よりもずっと、お互いの存在は大きくなっていた。
激しさを増す情勢。
いくつもの苦難を乗り越えて、またこの日を迎えることができた。
二人にとって、それは大切なことであり、また嬉しいことでもあった。
奉納し終えた後、人気のない場所に移動するラムナとライ。
そこでライは、先ほど奉納されたばかりの、綺麗にラッピングされたお菓子を差し出した。
「はい、ラムナん」
「いつもありがとな、ライ」
ラムナは、嬉しそうにそのお菓子を受け取る。
「おっ……」
箱を開けて、ラムナは思わず笑みを浮かべた。
中身は2年前に、恋人同士になった時にも、ラムナにプレゼントした思い出のクリームサンドクッキー。
ラムナの好みにあわせて、抑えられた甘さの、そのクッキーが大好きであった。
さっそく一つを口の中へ。
「美味い」
「また喜んでもらえて、嬉しいです」
ラムナの喜ぶ姿に、ライもまた嬉しい気持ちでいっぱいになった。
「やっぱり、ライのこのクッキーは最高だな」
その言葉に頬を染めながら、ライも嬉しそうに微笑む。
ぱりぱりと幸せそうに食べるラムナ。
と、ふとラムナはそこで手を止めた。
「どうか……しましたか?」
思わずライが尋ねる。
もしかして、知らない間に卵の殻が入っていたとか? 焼きすぎたクッキーがまぎれていたとか?
ライの胸に不安が募っていく。
「ライ」
「!」
突然、唇が奪われた。ラムナの唇……ではなく、ライの作ったそのクッキーに。
口の中に広がる、クッキーの甘さ。
そして、クッキーが少しずつなくなっていき、最後には唇と唇が重ねられる。
かぎりなく、甘い甘い口付け。
ライはその口付けを顔を真っ赤にさせながら、瞳を閉じて受け止めていた。
どのくらい経ったのだろう。
二人はそっと離れる。
「ラムナんったら……」
呟くような小さなライの声。
「いいだろ? たまにはこういうのも」
悪戯な少年のような瞳を輝かせながら、ラムナは言う。
とても心地よい甘さが、まだ二人の口の中に残っていた。
消えることのない、素敵な想い出として。
二人の心の中にずっと、ずっと……。
|
|