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君の傍で
星屑の丘でのんびりと夜空を眺め、リューがリュシスとの出会いを思い返す。
最初の印象は、とてもはかなく、今にも何処かに行ってしまいそうな危うい人……。
まるでガラス細工のように脆く、今にも壊れてしまいそうな雰囲気だった。
今でも沢山の白い花が風に舞い、佇む彼女の姿を思い出す。
(「思えばあの時からずっとリュシスを、追いかけていたのかも知れない……」)
そんな事を考えながら、石の部分にキャンディーのついた指輪に視線を送る。
どこからどう見ても、おもちゃと分かる代物。
おそらくぱっと見ただけでも、これが本物の指輪ではないと、簡単に見分けがつくはずだ。
この指輪を彼女にプレゼントしたら、きっと最初は怒るだろう。
もしかすると『どうして、こんな意地悪をするの』と叱られるかも知れない。
それを覚悟で彼女にキャンディーのついた指輪をプレゼントした。
「あ、あの、これ……」
案の定、リュシスが驚いた表情を浮かべる。
何か悪い冗談だと思ったのかも知れない。
さすがに彼女が怒る事は無かったが、かなり呆気に取られている様子。
軽い冗談のつもりでプレゼントしたが、少し驚かせ過ぎてしまったようだ。
「……悪い。本物はこれだ」
苦笑いを浮かべながら、リューがポケットの中から、本物の指輪を取り出した。
先程の指輪とは比べ物にならないほどの美しさ。
まるで流れ星を指輪に封じ込めたような、幻想的な輝きを放っている。
リューは彼女の左手をそっと手に取り、指輪をはめて口付けを落とす。
いつか、冒険者の力が不要になるその時が来たら、その時こそは……。
「……愛してる」
彼女の耳元でそっと囁く。
フォーナの時に『特別な存在だから』と彼女に告げられ、お互いずっと一緒にいようと約束した相手に、溢れんばかりの思いを込めて……。
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