● Eternal Place

 繋いだ手と手。
 確かな温もりが重ねられた手から感じる。
 それがマリンローズに幸せと安らぎを与えてくれていた。
 今回のランララ聖花祭は、独身でいる最後の夜。
 だから、いつもとは違う特別な日であった。

「マリン」
 夜空に月が輝く頃。クロイツは愛しい人の名を呼んだ。
「はい、クロさん」
 そのマリンローズの言葉に、クロイツは思わず眉をひそめる。
「そろそろ呼び捨てでもいいと思うんだが……」
「呼び捨て、ですか?」
 マリンローズの言葉にクロイツは静かに頷いた。
 二人が結ばれて3年が経つ。
 そろそろ名前で呼び合う仲になっても良いのだろうというのが、クロイツの見解だ。
 見つめられたせいか、それともその名を呼ぶのが照れてしまったのか。
 マリンローズは頬を染めて。
「クロ……さん。ああ、やっぱりまだ駄目です……」
 だからと、マリンローズは続ける。
「言える時が来るまで、クロさんでも……かまいませんか?」
 そんな風に見上げるマリンローズに、クロイツは可愛さと愛しさを感じていた。
「ああ、かまわない。そういうことなら、気長に待つことにしよう」
 そう、クロイツは微笑んだ。

「今日はクッキーか」
 嬉しくて嬉しくて仕方ない。彼のために作ったマリンローズの手作りクッキーは、すぐさまクロイツの口の中へ。
 食べ終えたクロイツからのお返しは、額への口付け。
「ありがとう、マリン。美味しかった」
「美味しく食べていただけただけで幸せです……」
 キスの温もりをもっと感じたいからと体を寄せてくるマリンローズ。クロイツはそれに気づいたかのように彼女の体を抱き寄せた。
 冬にプロポーズをした二人。それでも少し不安だったクロイツの心が、そうさせるのか。
「今更言うのもアレだけど、な。プロポーズ、受けてくれて嬉しかった」
 その言葉に顔をあげるマリンローズ。
「本当に私でよかったのか? ……後悔はしないか?」
 クロイツの口からそんな言葉が出る。
「私のこれからに後悔があるのならば……それはクロさんと別れて生きることになったときです。私の傍にいる男性は、もうクロさん以外考えられません……」
 クロイツの隣は、私だけの永遠の場所……そう告げるかのように力強く答えた。
 マリンローズのその言葉、その笑顔で彼の中にあった不安が消えてゆく。
「そうか……」
 静かにそういって、クロイツはマリンローズを抱きしめる。
 もうどこにも離さないと、いわんばかりに……。

イラスト:へっぽこ