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Eternal Place
繋いだ手と手。
確かな温もりが重ねられた手から感じる。
それがマリンローズに幸せと安らぎを与えてくれていた。
今回のランララ聖花祭は、独身でいる最後の夜。
だから、いつもとは違う特別な日であった。
「マリン」
夜空に月が輝く頃。クロイツは愛しい人の名を呼んだ。
「はい、クロさん」
そのマリンローズの言葉に、クロイツは思わず眉をひそめる。
「そろそろ呼び捨てでもいいと思うんだが……」
「呼び捨て、ですか?」
マリンローズの言葉にクロイツは静かに頷いた。
二人が結ばれて3年が経つ。
そろそろ名前で呼び合う仲になっても良いのだろうというのが、クロイツの見解だ。
見つめられたせいか、それともその名を呼ぶのが照れてしまったのか。
マリンローズは頬を染めて。
「クロ……さん。ああ、やっぱりまだ駄目です……」
だからと、マリンローズは続ける。
「言える時が来るまで、クロさんでも……かまいませんか?」
そんな風に見上げるマリンローズに、クロイツは可愛さと愛しさを感じていた。
「ああ、かまわない。そういうことなら、気長に待つことにしよう」
そう、クロイツは微笑んだ。
「今日はクッキーか」
嬉しくて嬉しくて仕方ない。彼のために作ったマリンローズの手作りクッキーは、すぐさまクロイツの口の中へ。
食べ終えたクロイツからのお返しは、額への口付け。
「ありがとう、マリン。美味しかった」
「美味しく食べていただけただけで幸せです……」
キスの温もりをもっと感じたいからと体を寄せてくるマリンローズ。クロイツはそれに気づいたかのように彼女の体を抱き寄せた。
冬にプロポーズをした二人。それでも少し不安だったクロイツの心が、そうさせるのか。
「今更言うのもアレだけど、な。プロポーズ、受けてくれて嬉しかった」
その言葉に顔をあげるマリンローズ。
「本当に私でよかったのか? ……後悔はしないか?」
クロイツの口からそんな言葉が出る。
「私のこれからに後悔があるのならば……それはクロさんと別れて生きることになったときです。私の傍にいる男性は、もうクロさん以外考えられません……」
クロイツの隣は、私だけの永遠の場所……そう告げるかのように力強く答えた。
マリンローズのその言葉、その笑顔で彼の中にあった不安が消えてゆく。
「そうか……」
静かにそういって、クロイツはマリンローズを抱きしめる。
もうどこにも離さないと、いわんばかりに……。
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