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ワイルドくまさんプリンの甘い罠
満天の星空が見える丘で、カルマは一抱えほどもある大きな包みを抱え、芝生に座ってイアソンが来るのを待っていた。
程なくしてイアソンが幾多もの試練を乗り越え、星屑の丘までやってきた。
「ひょっとして、待ちましたか」
心配した様子でカルマを見つめ、イアソンが口を開く。
「いま来たばかりですよ。それよりも、これ。プレゼントです」
分かりやすい嘘をつき、カルマがイアソンに大皿を渡す。
大皿を受け取ったイアソンは、これから何が起こるのか、少し不安な気持ちになった。
カルマは持参した包みの中から器の中に入った大きなくまさん型プリン(通称:ワイルドくまさんプリン)を取り出し、大皿の上まで運ぶと『ぷっちん☆』と音を立てて下に落とす。
「こ、これは……」
驚いた様子で汗を流し、イアソンが大きなくまさん型プリンに視線を送る。
大きなくまさん型プリンはぷるるんと可愛らしく左右に揺れ、ほんのりと甘い匂いが辺りに漂った。
「く、くまさんプリンです」
恥ずかしそうに頬を染め、カルマが上目遣いでイアソンにスプーンを渡す。
そのスプーンの持ち手にも、可愛らしいくまさんが模られており、円らな瞳をきゅるるんとさせている。
……さすがにこれだけ沢山のくまさんに見つめられ、プリンを食べる事は出来なかった。
もしかすると、イアソンはそんな事を考えていたのかも知れない。
「それでは、さっそく……」
ゴクリと唾を飲み込みながら、イアソンがくまさん型プリンを逆向きにすると、思い切ってスプーンを突き刺した。
そして、一気に口の中へ……。
「美味しい」
自然とその言葉が漏れた。
「カルマさんも一口どうですか?」
イアソンが笑みを浮かべる。
だが、スプーンは一本しかない。
その事に気づいて、カルマがションボリした。
「それじゃ、これで問題ありませんね」
今まで自分が使っていたスプーンでプリンをすくい、イアソンが彼女の口元まで運ぶ。
最初は申し訳ないやら、恥ずかしいやら、ちょっと嬉しいやらの気持ちで葛藤していたが、ここで断る理由もないので、遠慮なくパクッと食べた。
そして、ふたりはクスクスと笑い、ほんわかとした気持ちに包まれた。
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