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未来へと思いを馳せて ――forever with you――
終焉の時が近い事を感じさせる黒い太陽。
その頃から各地で確認された、キマイラ化する一般人。
今までにはあり得なかったような事件が起こり、最後の戦いが次第に迫りつつある事を予感させている。
そんな中、ニックとエステルの夫婦は、星屑の丘と呼ばれる場所で、身体を寄せ合って夜空を見ていた。
星屑の丘はふたりが思いを伝え、正式に交際を始めた、いわば始まりの場所。
ふたりが出会ったのは、それ以前……。
(「……あの頃は酷いものだった」)
ふとニックが目を閉じる。
荒野で育ったニックは環境のせいもあってすれており、慰み者とされた上に肉親である姉とも生き別れたエステルは身も心も磨り減っていた。
そんな中、ふたりは出会って次第に惹かれ、想いが通じ合って、心と身体を重ねあいながら、何とかここまで生きてきた。
(「……この先何があろうと離すものか」)
傍にある温もりをこの上もなく愛しく感じ、抱き寄せる手にぐっと力が篭った。
エステルは愛する者の温もりを感じ、優しくそっと微笑を返す。
彼女の夢はニックと、子供達と一緒に、平穏に暮らす事。
それが彼女のささやかな願い。
……無意識に触れた下腹から鼓動が伝わった。
過去の自分のままなら、肌を重ねられる事よりも、自らの腹に命を宿される可能性の方が恐ろしく、未来への恐怖ばかりが募っていたが、いまは違う。
包み込むような夫の優しさが、すべてを反転させてくれたから……。
愛される事がとても嬉しく、新たな生命を授かる事を心待ちに出来るのも、彼が傍にいてくれた、おかげ。
そして、いつか生まれてくる子供達のためにも、未来への希望を繋いでいきたいと、素直に思っている。
それぞれの想いを胸に、肩を寄せ合って夫婦は誓う。
何者にも道を閉ざさせはしない。
何があろうとも絶対に、一緒に未来を掴み取ってみせると……。
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