●
ずっと傍に
女神の木の下でリラと落ち合ったファルクは、自分のマントでリラの身体を包み込む。
ふたりとも奥手な性格なので、なかなかいちゃいちゃする事はないのだが、今日は勇気が貰える特別な日。
「貴方には、ずっと幸せで、いて頂きたいですから……」
いつもより少しだけ積極的になっているため、リラが四葉のクローバー型クッキーをファルクに贈る。
「でしたら……、僕とずっと一緒にいてくれますか……?」
爽やかな笑みを浮かべ、ファルクがボソリと呟いた。
「……はい。ずっと……、そばにいます。この先何があっても、ずっと……」
その言葉を聞いてリラが恥ずかしそうに頬を染め、小さくコクンと頷いて返事をする。
「……ありがとうございます。嬉しいです……」
自らの喜びを表現するため、ファルクがぎゅっとリラを抱きしめた。
「この手を、ずっと離さないで下さいな……」
ファルクにそっと身体を預け、リラが幸せそうな表情を浮かべる。
「はい……、ずっと離しません」
そう言ってファルクが彼女の身体を、さらにぎゅっと抱きしめた。
「ふふっ……。私だって……、離しませんから。いいですよね、今日はこういう日ですもの。必ずここに、還ってきますから……」
彼女も同じようにファルクに抱きつき、決して破る事の無い約束をかわす。
「ええ、今日はいつもより勇気を出せる日ですからね」
もう一度、彼女の顔を見つめながら、ファルクが優しくニコリと微笑んだ。
「大好き。来年も、再来年も、その先もずっと、春には桜を見ましょう」
その言葉を聞いてリラも勇気が出たのか、心の中で思っていた事を次々と口にする。
「ええ……。リラさん、目、瞑って貰ってもいいですか?」
だんだん恥ずかしい気持ちになってしまい、ファルクが顔を真っ赤にしながら彼女に頼む。
「はい……?」
不思議そうに首を傾げ、リラがゆっくりと目を閉じる。
一体、ファルクが何をしてくるのか気になったが、彼の事を信じて自分の身を預けた。
そのため、リラは少し躊躇してから、そっと唇を重ね合わせる。
「……も、もう……」
驚いた様子で目をぱしぱしさせ、リラが頬を膨らませた。
「えっと……、伝えてからだと決意が鈍りそうで……、怒られてもいいです……」
反省した様子で頬を掻き、ファルクが申し訳なさそうな視線を送る。
「……なら、お返しですよ」
それだけ言って不意に唇を重ね、リラが顔を真っ赤にした。
「……これで……おあいこですからね」
『きっと今日が特別な日だから』と思いつつ、リラが自分の大胆な行動に理由をつける。
そして、ふたりは互いの身体が火照ったまま、時間が経つのも忘れて、幸せな時間を過ごすのだった。
|
|